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AOMedia、次世代コーデック AV2 の仕様を確定 — 配信大手連合が打つ「特許料ゼロ」の次の一手

AOMedia が次世代動画コーデック AV2 の仕様 v1.0.0 を公開した。同じ画質を AV1 より約 3 割少ないデータ量で送れる。Netflix や Google が運営する団体が、ストリームごとにかかる特許料を外し帯域コストを直接削る一手を打った。ただし実機対応は数年先で、仕様確定はゴールではなく号砲だ。

TL;DR — 3 行で読む
  • AOMedia が次世代コーデック AV2 の仕様 v1.0.0 を 2026 年 5 月 28 日に公開、AV1 比で同画質あたり約 30%(帯域で最大 ~40%)のビット削減を狙う
  • 運営 12 社に NetflixGoogle・Amazon・Apple が並び、ロイヤリティフリー(特許使用料ゼロ)で MPEG 系の有料コーデックに対抗する構図
  • メンバーの 53% が確定後 12 か月以内の採用を予定する一方、ハードウェアのデコード対応は数年先で、YouTube 先行・プレミアム配信は DRM 統合待ちと見られる

概要

配信ビジネスの土台が、静かに一段進んだ。AOMedia(アライアンス・フォー・オープン・メディア、オープンメディア技術の業界団体)は 2026 年 5 月 28 日、次世代の動画コーデック AV2 の仕様 v1.0.0 を公開した。コーデックとは映像を圧縮・復元する方式のことだ。あわせて参照ソフト AVM(AOMedia Video Model)も公開された。

AV2 の売りは圧縮効率である。同じ見た目の画質を、現行の AV1 より約 30% 少ないデータ量で送れる。帯域(通信回線の容量)ベースでは最大 4 割の削減を目標に置く。AOMedia 自身の主観評価では、改良版 AV1 と比べて 38% 少ないビットで同等品質という結果も示された。

機能面では、ストリーミング・放送・リアルタイム会議に加え、AR/VR、画面を分割した複数番組の同時配信、画面そのものを映すスクリーンコンテンツの処理を強化した。デコード(復元)の処理負荷は AV1 の 2 倍未満に抑え、色情報をより細かく持つ YUV 4:2:2/4:4:4 形式にも対応する。再生側の負担を抑えつつ表現の幅を広げた設計だ。

経緯

AV2 の開発は 2020 年に始まった。AV1 を世に出した 2018 年の 2 年後にあたる。設計の主任は Google のエンジニア、デバルガ・ムカジーが務めた。5 年あまりの開発で参照ソフトには 2,700 を超える変更が積み上がっている。

AOMedia は 2025 年 9 月 15 日、設立 10 周年にあわせて AV2 を年末に出すと予告した。だが実際の仕様確定は約半年ずれ込み、2026 年 5 月の公開となった。コーデックの標準化が一筋縄でいかないことを示す遅れである。

前世代の AV1 は、すでに配信の現場に根を張っている。特許料が要らない強みが大規模配信のコストに効き、NetflixYouTube が採用した。AV1 はすでに両社の主要な配信で広く使われている。ただし今回の AV2 公開時点の AVM はあくまで参照実装で、エンコード(圧縮)速度は実用域になく、製品版エンコーダの最適化はこれからだ。

構造解釈:配信大手による「コーデックの内製化」

今回の確定で見えるのは、配信を売る側が映像圧縮の標準そのものを握りにいく構図である。AOMedia の運営 12 社を並べると、その性格がはっきりする。NetflixGoogle・Amazon・Apple・Meta・Microsoft・Samsung・NVIDIA・Cisco・Intel・Mozilla・Tencent。動画を配る大手と、それを再生する端末・チップの大手が同じ顔ぶれだ。

なぜ自前で作るのか。理由はコストにある。従来の HEVC(高効率動画圧縮、MPEG 系の有料コーデック)や後継の VVC は、特許をまとめて課金する「パテントプール」を通じて、配信や端末ごとに使用料がかかる。配信規模が大きいほど、この料金とビットレートは利益を削る。

そこで需要側が連合し、特許使用料の要らない(ロイヤリティフリーの)コーデックを自ら定める。AOMedia は「W3C 特許ルール」に倣い、貢献した技術を無償で供与させる枠組みで運営する。映像を仕入れる側が、仕入れ先の標準を自分たちで書いた。いわば圧縮レイヤーの内製化(垂直統合)である。

実利も大きい。同じ画質を 3 割少ないデータで送れれば、配信側は帯域・CDN(配信網)コストを直接圧縮できる。ハイパースケールの規模では、わずかな削減率でも金額は重い。AV2 は「特許料ゼロ」と「帯域削減」という二つの梃子を同時に握る設計になっている。

示唆:確定は号砲であって、普及はこれから

仕様の確定は出発点にすぎない。AOMedia の調査では、メンバーの 53% が確定後 12 か月以内、88% が 2 年以内の採用を予定する。だが実際に視聴者へ届くまでの障壁はなお高い。Netflix が「AV1 は現在、AV2 は未来」と位置づけるとおり、仕様確定はゴールではなく号砲であり、普及はこれからの数年で問われる。

WATCHLIST — 次に追う 3 つ
  1. ハードウェアのデコード対応がいつ広がるか。スマート TV は 2027〜28 年、モバイルは 2030 年以降との見方もあり、対応 SoC と機器の登場時期が普及の律速になる
  2. パテントプールの動き。ロイヤリティフリーを掲げても外部の特許主体が課金を主張すれば建付けは揺らぐ。AV1 でも Sisvel・Access Advance 等がライセンス料を求めた経緯がある
  3. 実トラフィックでの採用比率の立ち上がり。YouTube や Meta は早期配信に動きやすい一方、プレミアム配信は DRM 統合待ち。各社が公表する AV2 配信比率が普及の現実度を測る最初の物差しになる

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