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次世代の動画圧縮は配信費を下げるか――契約と端末対応で決まる採算

AV2(エーブイツー、動画データを小さくして送る次世代の圧縮規格)で通信量を減らせたとしても、採算は別に確かめる必要がある。契約上減らせる配信費と導入費の差が、利益への効果を決める。

TL;DR — 先に要点
  • AV2の採算は、通信量より、契約上減らせる配信費と追加費用の差で決まる
  • AOMedia(エーオーメディア、動画規格を策定する業界団体)は、特許使用料を求めない方針で仕様を公開した
  • ネットフリックスは作品ごとに通信量の候補を作る。端末対応と著作権保護は別途必要になる

概要

動画圧縮の更新では、削減した通信量と減った請求額を同じものとして扱えない。コンテンツ配信網(CDN、利用者の近くから映像を届ける仕組み)の契約が両者を結び付ける。

本稿でいう回避可能単価は、利用量を一単位減らした時に、契約上実際に減る請求額である。平均請求額を総量で割った値ではない。定額分や最低利用額の範囲では、回避可能単価がゼロになることもある。

配信費の削減額は、減った転送量に回避可能単価を掛けて求める。そこから新方式の導入費と運用費を引いた残りが、利益への効果になる。

経緯

アライアンス・フォー・オープン・メディアは、特許使用料を求めない方針でAV2仕様を公開した。この方針は、仕様を採用する際の特許使用料に関するものだ。配信システムが自動で完成するという意味ではない。

圧縮を担うソフトや機器への組み込み、端末の再生機能、デジタル著作権管理(DRM、不正利用を防ぐ暗号化と許可の仕組み)は、それぞれ別の実装である。端末とDRMの組み合わせごとに、再生試験も要る。

ネットフリックスの作品別圧縮は、作品ごとにビットレートラダーを作る。ビットレートラダーとは、画質と一秒当たり通信量が異なる複数の映像候補である。作品に合う候補を作るため、全作品へ同じ組み合わせを使う方法とは異なる。

HLS(エイチエルエス、形式と通信量が異なる映像候補を一覧で渡す配信方法)は、その候補を端末へ伝える。アップルの仕様では、一覧に圧縮形式と通信量を記し、端末側が対応できる候補を選ぶ。配信元が端末の対応可否を決めるのではない。

一覧にAV2を記すだけでは、対応しない端末で再生できない。端末が選べる既存方式の候補を残すことが、段階的な導入の前提になる。

複数方式を併用する場合は、同程度の通信量ごとに各方式の候補をそろえる必要がある。そうすれば回線状態が変わっても、再生中に圧縮方式を替えずに済む。

構造解釈:通信量ではなく減らせる費用で測る

アマゾン・クラウドフロントは、配信網の料金にデータ転送量とリクエスト数が関わると示す。同時に、定額や利用量込みの選択肢、一定額の利用を約束する契約向けの料金帯もある。公開料金の平均ではなく、自社契約の回避可能単価を使う必要がある。

転送量が減ってもリクエスト数が同じなら、リクエストに応じる料金は減らない。どの課金要素が変わるかを分け、請求が動く範囲だけを削減額に含める。

新方式の利益効果は、回避できる請求額から追加費用を引いて判断する。追加費用には、圧縮処理、保存、配信処理、検証、端末試験、新旧方式の併用が含まれる。

組み込みや端末試験に先に要する費用と、圧縮や保存で継続する費用は、発生時期が異なる。評価期間をそろえなければ、削減額が同じでも費用を回収する時期を比べられない。

前世代の動画圧縮規格AV1(エーブイワン)の査読研究は、圧縮効率を高めるほど処理負荷が増える関係を示した。これは規格を策定する団体とは別の研究による確認である。

配信網企業クラウドフレアは、ライブ配信のAV1圧縮に専用機器を使った。専用機器が必要な実装例は、通信量の便益だけで採算を判断できないことを示す。

AV2でも、仕様上の圧縮性能と商用運用の費用は分けて測る必要がある。圧縮時間が延びれば、配信前の処理能力や納期にも影響する。新旧の映像を併存させれば、保存量と検証範囲も増える。

示唆:作品、端末、契約を一緒に試す

導入判断では、代表作品ごとに旧方式とAV2の映像候補を作り、同じ画質条件で通信量を比べる。作品別に候補を作る方法なら、圧縮しやすさの違いを結果へ反映できる。

次に、HLSの一覧で同程度の通信量を持つ候補をそろえ、対応端末だけがAV2を選ぶことを確認する。再生開始時間、停止率、失敗率も方式別に測る。DRMを使う作品では、暗号化から再生許可までを通して試す。

費用面では、実際の転送量とリクエスト数を契約の料金帯へ照合する。最低利用額の範囲なら、通信量が減っても短期の請求削減はゼロになり得る。その場合は、画質や再生安定性の改善を別の成果として評価する。

AV2の導入範囲は、対応端末と契約別の削減額を確認してから広げる。仕様公開は検討の出発点だが、利益を確定するのは実装結果と契約条件である。

WATCHLIST — 次に追う 3 つ
  1. AV2を再生できるテレビ、ブラウザ、モバイル端末向け半導体がどの機種へ採用されるか
  2. 配信網の契約更新で、通信量の減少に応じて請求が減る単価や最低利用額がどう変わるか
  3. 複数の圧縮方式を併用する試験で、再生開始時間、停止率、失敗率が改善するか

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