WEBTOON、利益は出たが売上は伸びない — 2026 年 Q1 は調整後 EBITDA が 132% 増、一方で IP 映像化収益は 23% 減
WEBTOON Entertainment の 2026 年第 1 四半期は、コスト削減で調整後 EBITDA を前年比 132% 増やし純損失をほぼ半減させた。だが売上高は 3 億 2,090 万ドルと 1.5% 減り、IP 映像化収益は 22.8% 落ちた。利益改善と売上停滞が同居する四半期である。
- WEBTOON Entertainment の 2026 年 Q1 は調整後 EBITDA が前年比 132% 増の 950 万ドル、純損失は 2,200 万→880 万ドルへ半減
- 一方で売上高は 3 億 2,090 万ドルと 1.5% 減、IP 映像化収益は 22.8% 減の 1,975 万ドル、有料コンテンツ依存と日本市場の弱さが残る
- Naver Webtoon 系の作品供給を背景に創作者投資と AI 推薦で MPU を伸ばし、収益基盤の再加速を狙う
概要
利益は出た。だが売上は伸びなかった。これが WEBTOON Entertainment(ウェブトゥーン・エンターテインメント、Nasdaq: WBTN)の 2026 年第 1 四半期(1〜3 月)を一言で表す。同社は 5 月 11 日に決算を発表した。
収益性は明確に改善した。調整後 EBITDA(本業の稼ぐ力を示す利益指標で、利息・税・減価償却などを除いた値)は 950 万ドルと、前年同期の 408 万ドルから 132% 増えた。純損失も 2,200 万ドルから 880 万ドルへほぼ半減している。創業者で CEO のキム・ジュンク氏は「調整後 EBITDA の前年比 132% 増は大きい」と述べた。
ところが、売上高は 3 億 2,090 万ドルで前年から 1.5% 減った。為替の影響を除いた実質ベース(恒常為替=前年の為替レートで換算し直した値)では 3 億 2,640 万ドルと 0.2% の微増にとどまる。事業の太い柱である有料コンテンツ(読者が話単位などで課金して読む仕組み)は 2 億 6,140 万ドルで横ばい、IP 映像化収益は 1,975 万ドルと 22.8% も落ちた。手元資金は約 5 億 9,490 万ドル、無借金。財務は厚いが、トップラインは止まっている。
経緯
WEBTOON は韓国 NAVER 系のデジタルコミック企業で、2024 年に米 Nasdaq へ上場した。韓国・北米の「WEBTOON」、日本の「LINE マンガ」、小説プラットフォームの Wattpad(ワットパッド)などを傘下に持ち、月間利用者(MAU)は約 1 億 4,500 万人にのぼる。
四半期決算を地域別の有料コンテンツでみると、明暗がはっきり分かれる。韓国は 8,689 万ドルと 12.8% 伸び、その他地域も 7.8% 増。これに対し日本は 1 億 3,918 万ドルで 7.5% 減った。決算説明では、日本の MAU が 2,110 万人と 3.6% 減り、課金利用者(MPU)は 210 万人と 8.3% も落ちたことが明かされた。日本は同社にとって有料売上の最大市場でありながら、利用者の流出が止まっていない。
IP 映像化収益の急減について、経営陣は「IP の収益認識は、一定のマイルストーン(契約上の達成節目)に応じて四半期ごとにばらつく」と説明した。構造的な失速ではなく計上タイミングの問題だという立場だが、前年同期比で約 580 万ドルの目減りは小さくない。一方で全社の純損失縮小は、原価率の改善とコスト統制が効いた結果である。
構造解釈:「稼ぐ力」より「伸ばす力」が問われる局面
今回の数字が示すのは、WEBTOON が「赤字をどう減らすか」の段階を抜けつつあり、次に「売上をどう再加速させるか」を問われる局面に入ったことだ。
コスト削減による利益改善は、続けるほど効果が薄くなる。販管費や原価を絞れば EBITDA は上向くが、それは一度きりの底上げに近い。実際、同社の第 2 四半期見通しは恒常為替ベースの売上成長率を 1.7〜4.6%(売上で 3 億 3,200 万〜3 億 4,200 万ドル)と置く。一方で調整後 EBITDA は 0〜500 万ドルへ縮む想定だ。つまり「もう一段の投資フェーズに戻る」ことを会社自身が織り込んでいる。
弱点は二つに集約される。第一に有料コンテンツへの過度な依存だ。売上の 8 割超をここが占める一方、広告は 3,968 万ドルで微減、IP 映像化は 2 割超の減少。収益源の分散がまだ進んでいない。第二に日本の弱さである。最大の課金市場で利用者が縮めば、有料コンテンツの成長そのものが頭打ちになる。利益が改善しても、土台となる売上の伸びしろが細っているのが実情だ。
示唆:創作者投資と AI 推薦が反転の鍵になるか
では何が反転の起点になるのか。会社が前面に出すのは、創作者への投資と AI による推薦の高度化だ。同社は 2021〜2025 年に創作者へ累計 27 億ドルを配分してきた(2026 年を含めると 28 億ドル)と説明する。良質な作品の供給源を Naver Webtoon 系の制作網ごと太らせ、それが課金と映像化原作の両方を生むという「フライホイール(好循環の回転)」が同社の設計思想である。
実装面の核は AI 推薦だ。経営陣は、より関連性の高い作品を勧める施策が奏功して課金利用者(MPU)が 2.2% 伸びたと説明し、AI によるパーソナライズ推薦を磨き続けることで今後も MPU 成長を牽引すると述べた。加えて、米国で AI アバター企業 Genies(ジーニーズ)と組み、人気作のキャラクターを対話型の体験へ広げる取り組みを年内に始める。
- 日本の反転。新任の最高プロダクト責任者が日本の立て直しに重点を置くとされ、最大市場の MAU・MPU が下げ止まるかが最初の試金石になる
- IP 映像化の回復。「マイルストーン要因」という説明が、次四半期以降に実際の計上回復として現れるかどうか
- AI 推薦の持続力。MPU の伸びが一過性でなく恒常為替ベースの売上成長へ波及し、コスト削減頼みだった利益改善を「売上ドリブンの成長」へ切り替えられるか