U-NEXT、アニメ制作 GoHands を完全子会社化 — 配信会社が「作る」側へ回る垂直統合
国内最大級の配信会社が、アニメスタジオそのものを抱える。U-NEXT は GoHands を完全子会社化し、自社 IP の制作から配信までを一手に握る体制へ動いた。出資やライセンスで「買って」きた配信会社が、初めて制作を「持つ」側に回る。
概要
国内最大級の配信会社が、アニメ制作を自前で抱える側に回った。U-NEXT を運営する U-NEXT HOLDINGS は5月25日、アニメーション制作会社 GoHands の全株式を取得すると発表した。取得日は6月1日で、GoHands は完全子会社となる。取得価額は非開示。
GoHands は2008年8月設立、大阪市淀川区に拠点を置くスタジオだ。代表は岸本鈴吾。オリジナル作品『K』シリーズや『Hand Shakers』『Momentary Lily』などで知られる。
U-NEXT HOLDINGS は買収の狙いを、オリジナル IP の創出から制作・配信までを推進できる体制の構築だと説明する。期待するシナジーとして、コスト面の効率化、デジタル技術の活用による生産性向上、そして自社 IP のアニメ化による収益の多層化を挙げた。
経緯
配信会社にとって、アニメは長く「買ってくる」コンテンツだった。新作なら製作委員会に出資し、旧作ならライセンスを調達する。U-NEXT も独自調達と電子書籍・ライブ配信を束ねたハイブリッド型で、国内の独立系として会員を伸ばしてきた。今回はその外部調達の枠を越え、制作機能そのものを資本傘下に取り込む。
背景にはアニメ業界の需給逼迫がある。アニメ・コンテンツ評論家のまつもとあつし氏は、需要の高まりに制作の人手が追いつかず「制作ラインの確保に数年待たされることも珍しくない」と指摘する。制作枠を確保し、品質を担保するには、スタジオを内に持つ意味が大きい。
一方で課題も残る。同氏は、GoHands が高品質の作風で知られる一方、過去に模倣・盗用をめぐるトラブルを起こした経緯に触れ、親会社によるコンプライアンス体制の再構築が成否を分けると見る。
構造解釈:配信会社が「作る」側へ回る垂直統合
今回の買収が示すのは、配信プラットフォームが流通の下流から制作の上流へ遡る垂直統合の動きである。これまで配信会社の関与は、出資(製作委員会への参加)かライセンス購入にとどまっていた。スタジオを丸ごと所有すれば、企画・制作・独占配信を一社の意思で回せる。まつもとあつし氏は、自社の電子書籍・コミックで生んだ IP を内製スタジオでアニメ化し独占配信する垂直統合モデルを見据えた動きだと読む。
注目すべきは、これを国内の配信会社が手がけた点だ。AUTOMATON は、国内の配信プラットフォームがアニメ制作会社を買収するのは初めてだと報じた。海外に目を向ければ、ソニーが制作の Aniplex と配信の Crunchyroll を併せ持ち、すでに制作から配信までを内製化している。Netflix も MAPPA など日本のスタジオと包括的な業務提携を結ぶが、スタジオ自体を保有はしない。U-NEXT は国内勢として、ライセンスでも出資でもなく「所有」を選んだ。
示唆:配信プラットフォームのアニメ内製化
この一手は、国内配信市場の競争軸が「何を仕入れるか」から「何を自前で作れるか」へ移りつつあることを示す。海外資本の SVOD が潤沢な制作費で独占作を積む中、独立系の U-NEXT は制作能力そのものを取り込むことで、調達コストと制作枠の双方を内部化しにいった。自社 IP を持ち、それをアニメ化できる体制は、ライセンス料の支払いと供給の不確実性を同時に減らす。
ただし、スタジオを買うことと作品を当てることは別の問題だ。内製化が収益に結びつくかは、自社 IP のアニメ化をどれだけ実行できるかにかかる。
— Sources / 情報源
- U-NEXT HOLDINGS 公式: 株式会社GoHandsの株式取得による完全子会社化に関するお知らせ
- Anime News Network: U-NEXT Holdings to Acquire GoHands Anime Studio as 100%-Owned Subsidiary
- AUTOMATON WEST: Japan sees first acquisition of an anime studio by a domestic streaming platform
- まつもとあつし(Yahoo!エキスパート): U-NEXTがGoHandsを完全子会社化。国内配信初のアニメ会社買収が持つ意味と課題
- Deadline: Aniplex, Crunchyroll Establish Anime Production Joint Venture Hayate