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英政府、Paramount-WBD統合に「介入の意向」— 米欧が承認した1,100億ドル買収に待った

英文化相Paramount Skydance による WBD 買収に「介入の意向」を書面で表明した。米司法省・欧州委が承認した1,100億ドルの統合に、報道の多元性を理由に英国だけが待ったをかけた。

TL;DR — 3 行で読む
  • 英文化相Paramount Skydance による WBD 買収(約1,100億ドル)に「介入の意向」を議会へ書面で表明。回答期限は7月6日
  • 根拠は Enterprise Act 2002 の公益条項(報道の多元性)。介入が確定すれば Ofcom競争・市場庁 が公益要件を追加調査する
  • 米司法省は無条件承認、欧州委も是正措置付きで承認見込みという中、英国だけが独自の論点(メディア多元性)で待ったをかけた

概要

Paramount Skydance による WBD 買収(総額約1,100億ドル)に、英国政府が待ったをかけた。文化・メディア・スポーツ大臣の リサ・ナンディ は6月30日、議会への書面声明で「介入の意向がある(minded to intervene)」と表明した。米司法省が6月に無条件承認し、欧州委員会も是正措置付きで承認する見込みと報じられる中、英国は独自に報道の多元性を懸念材料に挙げた。両社への回答期限は7月6日。Paramount側は「英国において報道の多元性の問題は生じない」と反論している。

経緯

Paramount-WBD統合の規制審査は、法域ごとに時間差で進んできた。米司法省は6月13日、配信・リニアTV・劇場映画の3市場で「害なし」と結論し、無条件で承認した。欧州委員会は劇場配給の集中を懸念し、ユニバーサル との国際配給合弁からの離脱を条件に承認へ動いていると6月27日に報じられている。米・豪・中・仏・独・サウジアラビアではすでに承認済みとされる。

英国では、競争・市場庁(CMA)が6月9日から通常の企業結合審査(第1段階、期限8月7日)を進めていた。今回のナンディ文化相の声明は、これとは別の手続きだ。Enterprise Act 2002は、統合が競争面で問題なくても公益上の懸念がある場合に大臣が介入できると定めている。ナンディは6月30日付の議会向け書面声明で、両社に「介入の意向」を通知したと明かした。関係者への聴取と独自調査の結果、この統合が「英国のニュースメディアにおける十分な多元性」と「オンデマンド番組サービスを含む事業者の支配権の十分な多元性」を損なう恐れがあると判断した、というのが理由だ。名指しした対象は、放送・チャンネル側がChannel 5・TNT Sports・Cartoon Network・Nickelodeon・CNN International。加えて配信側でParamount+・HBO Maxの両サービスを挙げた。7月6日の回答後、大臣が正式介入を通知すれば、Ofcom が公益要件を、競争・市場庁 が企業結合の要件を、それぞれ調査し大臣に報告する二段構えになる。

構造解釈:配信を想定していない法律を配信に当てはめる

同じ買収に対し、法域ごとにまったく異なる論点で結論が割れている。米司法省が見たのは配信市場の競争構造で、Paramount+とHBO Maxの統合をNetflix・Amazon・Disneyを追う第3極の強化と読み、無条件で通した。欧州委員会が見たのは劇場映画の配給という川下市場だ。そして英国が持ち出したのは、両者のどちらとも異なる「報道・支配権の多元性」という公益基準だが、ここには一段深い事情がある。

ナンディの声明自身が認めているように、「事業者の支配権の多元性」という公益考慮事項は、Enterprise Act 2002の第58条にまだ明文化されていない。同法は放送がもっぱらリニアチャンネル経由だった時代に書かれており、配信・オンデマンド事業への統合の影響を想定していない。ナンディはこの穴を、同法第42条が認める大臣の裁量(新しい公益考慮事項を指定する権限)で埋めようとしている。つまり今回の「介入の意向」は、既存ルールの単純な適用ではなく、配信時代に合わせて英国のメディア規制の対象範囲そのものを広げる立法行為を伴う。グローバルなメディア統合は、各国の既存ルールに合わせて設計すれば足りる段階を過ぎ、規制の側がルールを配信に合わせて書き換えながら追いかける局面に入っている。

示唆:英国メディア資産の帰趨とスケジュールの綱引き

焦点は二つある。一つは、Ofcom競争・市場庁 による公益調査が実際にどこまで踏み込むか。Channel 5やCNN Internationalの扱いに、欧州委が求めたような資産売却や事業分離が課される可能性は否定できない。もう一つは時間軸だ。統合契約は12月31日までにクロージングしなければ、以降四半期ごとにWBD株主へ1株あたり0.25ドルの追加対価(ticking fee)を支払う条項を含む。英国の公益調査がこの期限とどう競合するかが、統合完了の実務上の最大の不確実性になる。米・欧が同じ買収を別々の理由で通した後に、英国だけが独自の価値基準で審査を長引かせる展開は、今後のクロスボーダーなメディアM&Aにとっても先例になりうる。

WATCHLIST — 次に追う 3 つ
  1. 7月6日までの両社の回答内容と、文化相が正式介入(法定通知)に踏み切るかどうか
  2. 介入確定後のOfcom競争・市場庁による公益調査の期間と結論(Channel 5・CNN International等の扱いに条件が付くか)
  3. 12月31日を過ぎてもクロージングしない場合にWBD株主へ四半期ごとの追加対価(ticking fee)が発生する条項に、英国審査の長期化がどこまで食い込むか

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