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ディズニー、ESPN抱き合わせで配信ライブTVを高くしたとの訴訟を5,000万ドルで和解

YouTube TVやDirecTV Streamの加入者が、スポーツ局ESPNの抱き合わせで料金が押し上げられたと訴えた集団訴訟が和解へ。ディズニーは3年間、ESPN抜きの料金プラン提案を検討し、ESPN交渉と自社配信部門の間に「情報の壁」を設けることに同意した。

TL;DR — 3 行で読む
  • ディズニーが、YouTube TVとDirecTV Streamの加入者による独占禁止法の集団訴訟を5,000万ドルで和解する案に合意した
  • 原告は、ディズニーがスポーツ局ESPNを梃子に基本プランへの組み込みを強制し、安いプランを締め出して料金を押し上げたと主張していた
  • 和解案は金銭賠償に加え、3年間ESPN抜きの提案を検討する義務と、ESPN交渉と自社配信Hulu + Live TVの間の情報遮断を含む

和解の概要

ディズニーは、配信ライブTV(生のテレビ番組をネット経由で束ねて売るサービス)の加入者が起こした独占禁止法の集団訴訟を、5,000万ドルで和解する案に合意した。原告はYouTube TVとDirecTV Streamの利用者である。訴訟名は「Biddle 対 ウォルト・ディズニー・カンパニー」、係属先は米カリフォルニア州北部地区連邦地裁(事件番号5:22-cv-07317)である。原告側はBathaee Dunne、ディズニー側はO’Melveny & Myersが代理人を務める。

対象は、2019年4月1日から2026年3月31日までにYouTube TVまたはDirecTV Streamを契約した利用者。請求の受付期限は2026年9月8日、和解を確定させる最終承認公判は2027年1月14日に予定される。賠償は加入期間や契約時の居住地などに応じて按分される。ディズニーは違法性を否認しており、和解は責任を認めるものではないとしている。原告側弁護団は和解金の30%にあたる最大1,500万ドルを弁護士報酬として請求している。

金銭以上に重いのが、行動面の是正である。ディズニーは最終承認後の3年間、配信ライブTV事業者から「ESPNを外したプランを売りたい」という提案が来た際、これを検討する義務を負う。あわせて、ESPNなど自社番組の配信交渉で得た秘密情報を、自社の配信サービスであるHulu + Live TVの担当者へ流さない「情報の壁」を維持することにも同意した。

提訴から和解までの経緯

訴訟は2022年に提起された。原告の主張はこうだ。ESPNはスポーツ中継を握る「なくては困る」番組であり、ディズニーはその交渉力を使って、配信ライブTV各社にESPNを基本プランへ組み込ませた。さらに最恵待遇条項(他社により有利な条件を出さないと約束させる契約条項)を用いて、ESPN入りより安いプランを各社が出せないようにし、結果として料金に下限を作ったという。これがシャーマン反トラスト法に反するとされた。

ディズニーは一貫して主張を退けてきたが、長期化する裁判を避けるために和解に応じた。和解案は2026年に予備的な承認を得ており、最終承認を経て確定する。賠償の原資となる5,000万ドルは、対象期間に該当する加入者へ分配される。集団の規模は和解文書では明示されていない。

ここで押さえておきたいのは、和解の金額そのものは大きくない点だ。配信ライブTVの市場規模に照らせば、5,000万ドルは象徴的な額にとどまる。争点の重心は賠償ではなく、ディズニーの今後の振る舞いを縛る是正条項のほうにある。

構造解釈:売り手と買い手を兼ねる自己取引

この和解が映し出すのは、垂直統合した事業者が陥る利益相反の構図である。ディズニーは番組の売り手としてESPNを持つ。同時に買い手の側にも、配信ライブTVのHulu + Live TVを持つ。つまりESPNの配信権をめぐる交渉で、ディズニーはテーブルの両側に座っている。

和解に「情報の壁」条項が入ったことが、この相反を浮かび上がらせる。ESPNの交渉担当が握る秘密の条件が自社のHulu + Live TVへ流れれば、YouTube TVのような競合よりも自社配信を有利にできる。条項はその経路を断つことを約束したものだが、裏を返せば、そうした自己優遇が起こり得る構造だと当事者が認めたに等しい。番組という上流と、それを束ねて売る下流を同じ企業が握るとき、上流の支配力は下流の競争条件を静かに歪める。和解は、その歪みを契約の文言として可視化した。

示唆:スポーツ権が縛るバンドル経済

この一件は、スポーツ中継権がいかにバンドル(番組の束ね売り)を縛ってきたかを示す。ESPNは束の要であり、これを基本プランに据えることで全体の料金が底上げされる――原告が描いたのはこの力学だった。是正条項が狙うのは、その要を外せる余地を制度的に空けることにある。

折しも市場は逆方向の圧力にさらされている。利用者は割高な大型バンドルを嫌い、必要な番組だけを選ぶ薄いプランへ向かう。ディズニー自身も2025年8月、ESPNを単体で配信する直販サービスを月額29.99ドルで始めた。番組を束ねて守ってきた収益構造と、束をほどけという需要・規制の双方からの圧力が、同じスポーツ権を軸にせめぎ合う。和解金の小ささに比して、3年間の是正が問いかけるものは大きい。要を握る者が、その要を外す提案にどこまで真剣に向き合うのか――確定後の運用が試金石になる。

WATCHLIST — 次に追う 3 つ
  1. 2027年1月14日の最終承認公判で、行動是正(ESPN抜き提案の検討義務)がそのまま確定するか
  2. 3年間で、YouTube TVなどの配信事業者がESPN抜きの料金プランを実際に売り出すか
  3. 情報遮断の下で、ディズニー自身のHulu + Live TVとESPN単体配信の価格・編成がどう動くか

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