米司法省、W杯の違法配信サイト400件を摘発 前回の5倍規模
米司法省が「Operation Offsides」の一環で、FIFAワールドカップの試合を無断配信していたドメイン約400件を差し押さえたと発表した。ペルー・ブルガリア・クロアチアなど6カ国にまたがる捜査で、FIFAや放送局・映画業界団体が情報提供に協力した。規模は前回2022年大会の5倍にあたる。
概要
米司法省が、ワールドカップの違法配信を狙い撃ちした。6月26日、大会の試合を無断で配信していたインターネットドメイン約400件を差し押さえたと発表した。作戦名は「Operation Offsides」(サッカーのオフサイド反則にちなむ)。FIFAを筆頭に、放送局のbeIN Media Group・NBCUniversal、映画業界団体MPAの下部組織ACE、UFC、Warner Bros.が情報提供で協力した。
捜査は米国内にとどまらず、ペルー・ブルガリア・クロアチア・ルーマニア・ポーランド・コロンビアのサーバーにも及んだ。司法省犯罪局のA・タイセン・デュバ次席司法長官補は「数百件のドメインを差し押さえ、W杯人気を利用して不正に利益を得る国際的なネットワークを断ち切った」とコメントしている。
経緯
違法配信サイトの摘発自体は珍しくないが、今回の規模は際立つ。2022年のカタール大会でも同様の摘発が行われたが、今回はその約5倍の規模に拡大した。国土安全保障捜査局(HSI)のエリック・ウェインドルフ特別捜査官は「違法配信サイトを利用すれば、著作権侵害だけでなくマルウェア感染や個人情報流出のリスクにもさらされる」と視聴者に注意を促した。
調査を追跡したTorrentFreakは、押収されたドメインのうち142件を独自にリスト化した。そのなかには月間1500万訪問を集めていたistreameast.appのような大規模サイトのほか、「kooora365.com」「bein-match-worldcup.com」のように正規メディアの名称を模したブランドも含まれていた。一方で、フィットネスブログを装っていたfitforcedaily.comのように、期限切れの既存ドメインを買い取って検索エンジンの評価を流用する手口も確認されたという。
同記事は、より人気の高いサイトが差し押さえを免れている点も指摘している。ロシアの.suドメインを使い月間7300万訪問を集めていたfutbol-libre.suは、米当局の管轄が及ばない海外レジストリを使う限り、今回のような差し押さえの対象外にとどまる。
構造解釈:権利の価値を守るコストが国家の執行力に依存する構造
ワールドカップの放送・配信権は、放送局や配信事業者が数十億ドル規模を投じて獲得する資産だ。権利者にとって、違法配信の横行はその投資回収を直接目減りさせる。放送局・配信事業者・映画業界団体・FIFAという利害の異なる組織が今回そろって情報提供に動いたのは、正規の権利保有者全体が同じリスクを共有しているからにほかならない。
ただしTorrentFreakが指摘するように、今回の摘発が及ぶのは米当局の管轄が届くドメインに限られる。ロシアの.suドメインのような執行の及ばない領域に大規模サイトが残っている以上、権利保護の実効性は最終的に各国の法執行機関の協力体制、とりわけ国境をまたぐ捜査協力の広さに左右される。今回6カ国のサーバーに捜査が及んだこと自体が、単独の国家では対処しきれない海賊版インフラの分散構造を裏づけている。
示唆:スポーツ権の高騰と海賊版対策の非対称な競争
スポーツの生中継権が高騰を続けるほど、正規の権利者と海賊版サイトの間の利害の差は広がる。権利者は巨額を投じて独占配信権を得るが、海賊版側は既存の期限切れドメインを安価に転用し、検索エンジンの評価だけを引き継いで視聴者を集める。両者のコスト構造は非対称であり、摘発の規模を5倍に拡大しても、管轄の及ばない海外ドメインという抜け穴は残り続ける。
今回の規模拡大は、権利者連合と法執行機関の協力が定着しつつあることを示す一方、海賊版側も手口を変え続けている実態を映す。次の大型スポーツイベントに向けて、この摘発と回避のいたちごっこがどこまで縮まるかが、スポーツ配信権の実質的な価値を左右することになる。
- 差し押さえを逃れた海外ドメイン(ロシアの.su等)の運営者に対し、国際協力を通じた追加の摘発が続くか
- 今回押収したドメインの運営者に対する刑事訴追が実際に進むか
- 次回大会に向け、期限切れドメインの転用など海賊版側の手口の変化に、業界と当局の連携がどこまで追随できるか
— Sources / 情報源
- U.S. Department of Justice: United States Seizes Hundreds of Internet Domains Used to Illegally Stream World Cup Matches
- Advanced Television: US DoJ scores World Cup anti-piracy success
- TorrentFreak: Feds Seize Domain Names of Nearly 400 Pirate Sports Streaming Sites
- Gizmodo: DOJ Shuts Down Nearly 400 Sites Hosting Illegal World Cup Live Streams