今週の深掘り · Weekly Deep-Dive

平日の速報とは別建て。週に一度、先週の最も重要な一本を選び、複数の出来事を一つの構図で読み解く編集部の論説です。

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重い放映権を一社で — JTBC 法定管理が問う、プレミアムスポーツ権の支え方

プレミアムなスポーツ放映権の調達コストは、一社で抱えるには重くなっている。韓国の JTBC は五輪と W杯の独占権に約 7,000 億ウォン(約 5 億ドル)を投じたが、再販と広告収入が伸びず、206 億ウォン(約 1,400 万ドル)の借入を返せずに法定管理を申請した。共同調達で支える地上波、配信権で伸びる CHZZK、無料を貫く KBS——同じ W杯への各社の対応は、重い権利をどう支えるかという一点に行き着く。

TL;DR — 3 行で読む
  • JTBC を含む中央グループ 5 社が法定管理を申請。2019 年に共同調達の枠組み(コリア・プール)を離れ、五輪と FIFA W杯の独占権に約 7,000 億ウォンを投じたが、再販と広告収入が伸びず 206 億ウォンの借入を返せなかった
  • 同じ W杯を、KBS は無料の地上波で、ネイバーCHZZK は配信で届けた。CHZZK は配信権を追い風に同時接続 482 万人を記録し、週間利用時間で SOOP を初めて上回った
  • インドでは JioHotstar 陣営が W杯を映画館でライブ上映し、ソニー系はクリケット権をテレビと配信で展開。重い放映権を、各社が複数の出口へ広げている

今週の問い

大型スポーツの放映権は、一社で抱えるには高くなりすぎたのか。先週、韓国の JTBC を含む中央(チュンアン)グループの 5 社が、ソウルの裁判所に法定管理(裁判所の管理下で会社を立て直す手続き)を申請した。背景には、五輪と FIFA ワールドカップの独占放映権をめぐる重い負担がある。

JTBC は 2019 年、五輪(2026〜2032 年)と W杯(2030 年まで)の独占権を約 7,000 億ウォン(約 5 億ドル)で取得した。複数の大会にまたがる長期の投資で、回収できるかどうかは、権利を広告・再販・加入料へ換えられるかにかかっていた。

その回収が滞った。地上波各局への再販交渉は 3 月末に決裂し、テレビ広告市場の縮小も重なった。資金繰りが詰まり信用格付けも下がるなかで、JTBC は 206 億ウォン(約 1,400 万ドル)の借入を返済できず、法定管理を申請した。問うべきは、この一社の事例をどこまで一般化できるかだ。重い権利を支えられる事業の形と、支えきれない形は何が違うのか。

出来事の地図

JTBC のつまずきは、権利を単独で抱えた構造に根がある。韓国の地上波は長く「コリア・プール」で動いてきた。KBS・MBC・SBS が共同で大型スポーツ権を買い、費用と負担を分け合う枠組みだ。JTBC は 2019 年にこの枠を離れ、国際オリンピック委員会(IOC)と直接交渉して独占権を握った。共同保有なら分散できたはずの費用を、一社で抱える形になった。

規制側も動いた。放送メディア通信委員会は先週、点検班を設けて状況の監視に入った。委員長は、W杯開催国の放送局が更生を申請した事態を受け、普遍的視聴権(国民の大多数が大型スポーツを無料で見られる権利)をめぐる議論のなかで放送準備に支障が出ないよう注視する、と述べた。権利の保有者が揺らぐと、視聴者の公共的な利益が論点に浮かぶ。

同じ W杯は、複数の出口から同時に届いている。KBS は無料の地上波で中継を続け、字幕や音声解説まで添えて誰もが見られる体制を整えた。一方、ネイバー の配信サービス CHZZK は、保有する配信権を追い風に韓国戦で同時接続 482 万人を記録した。6 月 8〜14 日の週間利用時間では、競合の SOOP を 2024 年 5 月の開設以来はじめて上回っている。テレビと配信が視聴を奪い合ったというより、無料放送と配信が並走し、それぞれの強みで同じ試合を届けた構図だ。

インドでも、権利は複数の画面へ広がっている。JioHotstar を運営する JioStar(ジオスター)は、女子 T20 ワールドカップを全国の映画館で 168 回以上ライブ上映する。配信権を劇場体験にも生かす試みだ。ソニー系の SonyLIV(動画配信)と Sony Sports(スポーツ専門チャンネル)も、インド代表のアイルランド遠征(2 試合の T20 国際戦)の独占権を取り、テレビと配信の両面で展開する。一つの権利を、より多くの出口で見せて回収につなげる動きである。

編集部の読み:重い権利を、分け合うか規模で抱えるか

JTBC の法定管理は、放送が配信に取って代わられた話ではない。同じ試合を地上波も配信も並んで届けているとおり、放送と配信は今のところ共存している。問われたのは、高くなった権利を支えられる事業の形だ。

大型スポーツの独占権は、長期かつ巨額の前払いに近い。買った時点で価値が確定するわけではなく、視聴を広告・再販・加入料へ換える過程ではじめて元が取れる。だから権利の重さに耐えるには、おおむね二つの道になる。費用を複数の主体で分け合うか、回収を支えるだけの規模と出口を自前で持つかだ。

韓国の地上波が続けてきたコリア・プールは、前者の典型である。共同で買い、無料放送として広く届け、費用を分担する。KBS が無料中継を貫けるのも、この分担と公共放送としての位置づけがあるからだ。後者にあたるのが、ネイバーの CHZZK である。検索やコマースを含む大きな利用者基盤を背景に、配信権を自社サービスの成長へ直結させた。規模があるからこそ、独占権を引き受けても回収の道筋を描ける。

JTBC はそのどちらでもなかった。共同調達の枠を離れて費用の分担を手放す一方、権利を吸収しきれる規模の出口も持たないまま、単独で独占権を抱えた。再販と広告という外部の回収手段に頼る設計は、その回収が細った局面で行き詰まりやすい。今回の事態は、戦略の是非という以前に、権利の重さと事業規模の不釣り合いが表面化したものと読める。

インドの動きは、同じ課題への別の答えだ。映画館での上映やテレビと配信の併用は、一つの権利をできるだけ多くの出口へ広げ、回収の間口を増やす試みである。プレミアムなスポーツ権は、単独の放送枠だけで支えるには重くなった。費用を分け合うか、規模で抱えるか、出口を広げるか。先週の韓国とインドは、その選択肢を具体的な形で見せている。

WATCHLIST — 次に追う 3 つ
  1. JTBC の法定管理で、五輪・W杯の独占権が再販・分割・地上波との共同保有のどこへ向かうか
  2. CHZZK が W杯後も利用時間で SOOP を上回り続けるか(大会後に同時接続が落ち着いてからの定着度)
  3. JioHotstar の映画館ライブ上映が、単発の話題でなく継続的な収益の出口として定着するか

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