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SM、Q1 売上 2,791 億ウォン (+21%) — コンサート +56% が示す K-POP の「1 再生」から「1 ファン」への転換

SM Entertainment の 1〜3 月期は連結売上 2,791 億ウォン、本体ベースでコンサートが前年比 56% 増、グッズ・ライセンスが 20% 増。録音原盤のストリーミング利幅が薄くなるなか、ライブと物販でファン一人当たりの単価を直接稼ぐ K-POP 各社の体質転換が、決算の数字としてはっきり表れた四半期となった。

TL;DR — 3 行で読む
  • SM Entertainment の 1〜3 月期連結売上は 2,791 億ウォン (前年比 +20.6%)、営業利益 386 億ウォン (+18.5%)。伸びの主役は録音原盤ではなくコンサートと物販
  • 本体ベースでコンサートが前年比 +56.0% (608 億ウォン)、グッズ・ライセンスが +20.3% (474 億ウォン)。「1 再生」より「1 ファン」の単価を稼ぐ構造へ
  • 同じ転換は HYBEWeverseJYP EntertainmentYG Entertainment にも共通。原盤配信の薄利を、ライブ・物販・スーパーファン課金で補う設計が業界標準に

概要

K-POP の稼ぎ頭が、音源そのものから「ファンとの接点」へ移りつつある。SM Entertainment (旧 SM エンターテインメント、韓国の大手芸能事務所) が 5 月 6 日に開示した 2026 年 1〜3 月期決算は、その転換を数字で裏づける内容となった。

連結売上は 2,791 億ウォン (約 1 億 9,200 万ドル) で前年同期比 20.6% 増。営業利益は 386 億ウォン (同 18.5% 増) だった。会社は伸びの要因を「コンサート/グッズ・ライセンス事業の成長、子会社の収益改善、そしてスーパーファン向けアプリ DearU (ディアユー) の連結化」と説明している。

本体 (親会社単独) ベースで見ると、構造がさらに鮮明になる。売上は 1,893 億ウォン (前年比 14.4% 増)。このうちコンサートが 608 億ウォンで 56.0% 増、グッズ・ライセンス (MD/licensing) が 474 億ウォンで 20.3% 増と、ライブと物販が二本柱で伸びた。一方、フィジカル盤とデジタル音源を合わせた音楽収入は 575 億ウォンで 15.2% の減少だった。音源は減り、体験で稼ぐ。四半期の損益はその一言に集約される。

経緯

伸びの中身を分解すると、まずコンサートの牽引が目立つ。SUPER JUNIOR の 20 周年ツアー「SUPER SHOW 10」(12 公演)、NCT DREAM、aespa (エスパ)、RIIZE (ライズ)、NCT WISH のツアーが重なり、公演規模そのものが前年から拡大した。コンサートは季節要因の振れが大きい事業だが、稼働公演数を積み上げたことで前年同期の 390 億ウォンから 608 億ウォンへ跳ねた。

グッズ・ライセンスの 20.3% 増も、ツアーと連動した「会場・期間限定の体験」が支えた。EXO の「REVERXE THE WORLD」や NCT WISH の「WISH BAKERY」といったポップアップ (期間限定の物販店) が好調だった。aespa の公式ペンライト刷新と、新人 Hearts2Hearts (ハーツトゥハーツ) のペンライト投入も上乗せした。アルバム自体も新譜販売枚数が前年の 92 万枚から 179 万枚へ倍増しており、EXO『REVERXE』が 101 万枚を稼いでいる。

注意したいのは利益の見え方だ。連結純利益は 367 億ウォンで前年比 85.5% の減少だが、これは前年同期に DearU 株の追加取得に伴う一時的な大幅益 (持分法評価の押し上げ) があった反動と法人税の影響による。本体ベースの純利益はむしろ 389 億ウォンで 20.9% 増えており、本業の収益力は伸びている。前年の高いベースが連結値を歪めているだけ、というのが会社の整理である。

構造解釈:音源の薄利を、ライブと物販で取り戻す設計

ここで起きているのは、K-POP 産業の収益モデルが「1 再生いくら」から「1 ファンいくら」へと軸足を移す動きだ。

背景には、録音原盤のストリーミング配信が構造的に薄利だという事情がある。配信プラットフォームに払う取り分や原盤・出版の権利者への分配を差し引くと、レーベルの手元に残る 1 再生あたりの利幅は小さい。再生回数をいくら積んでも、そこから抜ける利益には天井がある。だからレーベルは、同じ熱量のファンから「再生」以外の形でいくら引き出せるかへ関心を移す。

その「以外」の中身が、まさに今期 SM が伸ばしたコンサート・グッズ・スーパーファン課金である。ライブのチケット、ペンライトやポップアップの限定グッズ、そしてアーティストと擬似的に 1 対 1 でやり取りできる有料メッセージアプリ DearU。いずれも「ファン一人あたりの年間支出」を直接押し上げる導線だ。今期 DearU は連結子会社として 234 億ウォンの売上を加えた。SM は同社を約 45% 保有する。再生数という”面”ではなく、熱心なファンという”濃度”を取りに行く設計といえる。

この転換は SM 固有の話ではない。最大手の HYBE (ハイブ、BTS の所属事務所) はファンプラットフォーム Weverse (ウィーバース) を軸に、コミュニティ・物販・ライブ配信を一つのアプリへ束ねて「ファン一人あたり単価」を最大化する設計をいち早く進めてきた。JYP EntertainmentYG Entertainment も、ツアーと物販を収益の柱に据える点で方向は同じだ。録音原盤の薄利を、ライブ・物販・スーパーファン課金という”per-fan”の束で埋める。それが韓国の上場 4 社に共通する標準形になりつつある。

示唆:ファン単価モデルがどこまで持つか

per-fan モデルは利幅が厚い一方、再生数モデルにはない弱点も抱える。音源が薄利でも、ファンとの接点を世界に広げられる事務所だけが、この転換を成長に変えられる。

WATCHLIST — 次に追う 3 つ
  1. 四半期業績の振れの大きさ。コンサートはツアーの本数と日程に売上が強く連動し、公演が薄い四半期は反落しやすい。年間を通したツアー設計と新人デビューの間隔が業績を左右する
  2. ファン課金の「単価」をどこまで上げられるかの上限。一人あたり支出には現実的な天井があり、母数(ファン数)を海外で広げ続けられるかが単価頼みのモデルの持続性を決める
  3. 地域分散。北米・中南米のような単価の高い市場でライブと物販をどれだけ取り込めるかが、per-fan モデルの伸びしろを規定する

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