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NMPA、Udio・KLAY と業界横断 AI ライセンス — 出版側が「原盤と同等」を勝ち取る

AI 学習の対価はレーベルの個別和解が先行し、作詞作曲側は置き去りだった。全米音楽出版社協会(NMPA)UdioKLAY と結んだ業界初の横断ライセンスは、学習対価で楽曲を原盤と同水準に扱わせる枠組みだ。訴訟と契約を並走させる音楽出版の二正面戦略が、配分構造を変えにいく。

TL;DR — 3 行で読む
  • 全米音楽出版社協会(NMPA) が 6 月 10 日の年次総会で、AI 音楽の UdioKLAY との業界横断ライセンス契約を発表。出版社会員はオプトイン方式で、Udio 分は週明けから、KLAY 分は今夏に始動する
  • 出版社会員向けの業界横断 AI ライセンスは初で、学習対価は原盤(レーベル)と同水準。UMGWMG の個別和解が先行した原盤側に、出版の包括枠組みが追いつく
  • 同じ総会で NMPA は SpotifyAmazon のバンドル料率による約 5 億ドルの逸失価値も報告。「良い AI とは契約し、悪い行為者は訴える」二正面戦略が出版の交渉力を支える

概要

作詞作曲側が、AI 学習の対価交渉でついに主役の座に着いた。全米音楽出版社協会(NMPA) のデイビッド・イスラエライト会長兼 CEO は 6 月 10 日の年次総会で、AI 音楽企業 UdioKLAY との業界横断ライセンス契約を発表した。出版社会員向けの包括的な AI ライセンスは業界初となる。

枠組みの核心は対価の同等性にある。契約により、出版社(作詞作曲の権利者)は AI 学習の対価でレーベルと同水準の補償を受ける。イスラエライト氏はこれを「我々が常に要求してきたもの」と呼んだ。NMPA 会員はオプトイン(参加を自ら選択する)方式で加わり、Udio との契約は週明けから、KLAY との契約は今夏に受付が始まる。

経緯

原盤側の交渉が先行してきた。Udio は大手レーベルから著作権侵害で提訴された後、2025 年 10 月に UMG、11 月に WMG と相次いで和解しライセンス提携へ移行。独立系を束ねるマーリンや出版大手コバルトとも契約を重ねた。一方の KLAY はロサンゼルス拠点の未ローンチ企業ながら、「ライセンス済み楽曲のみで学習する」方針を掲げ、2025 年 11 月に UMG・WMG・Sony Music と原盤・出版双方の契約を結んでいる。

NMPA は契約一辺倒ではない。イスラエライト氏は、悪い AI 行為者を訴えることと良い AI パートナーにライセンスを与えることは矛盾せず NMPA は両方やると述べ、秋にはナッシュビルで AI と作詞作曲の業界会議「AI ソングス・サミット」を開くと予告した。同じ総会では収益の明暗も示された。2025 年の米出版収益は 73 億ドルと前年の 70.4 億ドルから伸びた一方、SpotifyAmazon のバンドル(複数サービスの抱き合わせ割引)による法定料率の引き下げで、2024 年以降に約 5 億ドルの価値が失われたとの試算が出された。

構造解釈:個別和解から「集団の枠組み」へ — 出版の弱点を先回りで塞ぐ

出版の構造的な弱点は、権利の細分化にある。1 曲に複数の出版社・ソングライターがぶら下がる世界では、AI 企業との個社交渉は大手にしかできず、中小と個人は取り残される。NMPA の業界横断ライセンスは、集団でレートと条件を固定することでこの非対称を塞ぐ仕掛けだ。

配信の歴史と並べると意図はより鮮明になる。配信のメカニカル印税(複製権の対価)は法定料率に縛られ、出版の取り分は常にレーベルに劣後してきた。バンドルによる 5 億ドルの逸失は、その料率構造を突かれた象徴である。AI ではその轍を踏まず、法定の枠の外で最初から「原盤と同等」を契約に書き込んだ。AI が学習するのは録音だけでなくメロディと歌詞そのものだ、という出版側の理屈が、初めて対価の数字に反映されたことになる。

示唆:「同等」の先例が次の交渉を縛る

この枠組みは Udio・KLAY の 2 社に留まらない先例として働く。今後、Suno など係争中のプレイヤーが和解に向かうとき、出版側が「同等」未満の条件を受け入れる理由は無くなった。

WATCHLIST — 次に追う 3 つ
  1. オプトインの実勢。自前の直接契約を持つ大手出版社と中小の参加率がどう割れるか
  2. 波及。係争中の AI 企業との和解に、この「楽曲=原盤同等」条件がテンプレートとして持ち込まれるか
  3. バンドル問題の出口。5 億ドルの逸失試算を武器に NMPA が料率の再交渉や立法・規制の働きかけへ進むか

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