経営・戦略 · Strategy & Corporate

Netflix、縦型フィード「クリップ映像」を日韓へ — 7 月のアプリ刷新で「発見」を短尺化

縦型短尺の隆盛に、世界最大の SVOD が「完成品」ではなく UI で応える。Netflix は 7 月、日本と韓国でモバイルアプリを刷新し、縦型動画フィード「クリップ映像」を導入する。既存作品のハイライトを TikTok 型の動線に流し、すきま時間を本編視聴への入口に変える設計だ。短尺アプリに奪われた可処分時間を取り返す防衛戦でもある。

TL;DR — 3 行で読む
  • Netflix が 6 月 10 日のアジア太平洋向け製品発表会で、7 月から日本と韓国のモバイルアプリを刷新すると発表。縦型動画フィード「クリップ映像」を導入する
  • クリップは既存作品のハイライトを視聴履歴でパーソナライズして流し、マイリスト追加・共有・本編への直行を 1 タップで結ぶ。マイクロドラマ型の完成品ではなく、本編への送客装置だ
  • 4 月末に米英豪印など 9 カ国で始まった刷新が、7 月に日韓へ広がる。ReelShortYouTube に流れるすきま時間を取り返す UI の防衛戦が、東アジアの主要市場に到達する

概要

Netflix がモバイルの「発見」を縦型に作り替える。同社は 6 月 10 日、アジア太平洋向けの製品発表会で、日本と韓国のモバイルアプリを 7 月から順次刷新すると発表した。柱は縦型動画フィード「クリップ映像」の導入だ。

クリップ映像は、配信中の映画やシリーズの短いハイライトを縦スクロールで次々に流すフィードである。気に入ったクリップは「マイリスト」への追加、友人への共有、本編ページへの直行が 1 タップで完結し、フィード自体も視聴履歴に応じてパーソナライズされる。ホーム画面の再設計とナビゲーションの簡素化も同時に入る。

経緯

この刷新は 4 月 30 日にグローバル発表され、初日に米国・英国・インドなど 9 カ国で始まった。最高プロダクト・技術責任者のエリザベス・ストーン氏は、モバイルを利用者が愛するエンタメとつながるうえで欠かせない場と位置付けている。アジア太平洋では豪州・ニュージーランド・フィリピン・インド・マレーシアで展開済みで、日韓は次の波にあたる。公式ヘルプも、クリップ映像を「今後数カ月で世界に広げる」と段階展開を明記する。

同日の発表会ではキッズ向けゲームの拡充も示された。日本では 6 月 20 日、ヒット作『KPOP ガールズ! デーモン・ハンターズ』を題材にした 6 種のミニゲームが「キッズパーク」(追加料金・広告なしの子ども向けゲーム集)に加わる。公開から半年で 5 億 1,800 万回視聴された看板 IP を、視聴以外の接点へ広げる動きだ。

構造解釈:作るのは短尺ドラマではなく「予告編の無限フィード」

今回の設計で目を引くのは、Netflix が短尺ブームに「完成品」で参戦しなかったことだ。中国発の縦型短尺ドラマは 1 話単位で課金する商品として急成長したが、クリップ映像が流すのはあくまで既存カタログのハイライトである。テッククランチ(米テック媒体 TechCrunch)はこれを「短尺動画の人気拡大への Netflix の回答」と評した。

つまりクリップは商品ではなく送客装置だ。スマホのすきま時間は YouTube や TikTok、そして ReelShort のような短尺アプリに流れている。調査会社オムディアの 2 月の分析では、米国のモバイル利用に限れば ReelShort 利用者の 1 日あたり視聴時間は 35.7 分と、Netflix の 24.8 分を上回った。巨大な長尺ライブラリーを資産に持つ Netflix にとって、合理的な対抗は短尺コンテンツの自作ではない。短尺を入口に変換し、本編視聴へ橋を架けることだ。膨大なカタログから次の一本を選べない「発見問題」への答えとしても、横並びのジャンル行より没入型の縦フィードのほうが強い。

示唆:短尺消費の「本場」日韓が試金石

展開の順序も示唆的だ。Netflix はアジア太平洋を、モバイルで同サービスを毎日使う視聴者が多い地域と位置付けており、韓国メディアは本機能を「TikTok 型フィード」と紹介した。中国発の縦型短尺の波及が進む東アジアへの投入は、機能検証というより防衛戦の本格化と読める。

WATCHLIST — 次に追う 3 つ
  1. 転換率の開示。クリップ起点の本編再生やマイリスト追加がどれほど生まれるかが、決算や製品発表で数値として示されるか
  2. 対象の拡張。公式発表が予告するポッドキャストやライブ配信のクリップ化がどの市場から入るか
  3. 国内勢の追随。TVerU-NEXT、縦型ドラマアプリが「発見の縦型化」をどう取り込み、UI の同質化が進むか

— この記事はどうでしたか — Tell the desk

記事に登場するエンティティ
関連記事