昆侖万維、海外ショートドラマで MAU 首位も大幅赤字 — DramaWave/FreeReels の集客費が利益を食う 2026 年 Q1
海外ショートドラマアプリ DramaWave と FreeReels が利用者数で首位に立ち、月間流水は 4,800 万ドルを超えた。だが集客費の急増で、四半期は 8.87 億元の最終赤字を計上した。トップラインが伸びても単位経済が成立しない、微短劇の構造問題が決算に表れた。
概要
海外で最も使われているショートドラマアプリを抱えながら、運営会社は赤字を広げている。中国の 昆侖万維 (クンルンワンウェイ) が 4 月 28 日に開示した 2026 年第 1 四半期決算は、その矛盾を数字で示した。
同社の海外ショートドラマアプリ DramaWave (ドラマウェーブ、課金型) と FreeReels (フリーリールズ、無料型) は、合算の MAU (月間の利用者数) で海外 微短劇 (1 話 1〜2 分の縦型ショートドラマ) 市場の首位に立つ。ショートドラマ事業の月間流水 (アプリ内課金の総額) は 4,800 万ドルを超え、ARR (年間化した経常収益) は 5.7 億ドルを突破したと同社は説明する。
だが収益性は逆を向く。四半期の連結売上高は 25.7 億元 (前年同期比 45.69% 増) と高く伸びたものの、親会社株主に帰属する最終損益は約 8.87 億元の赤字となった。トップライン (売上の伸び) と最終損益が逆方向に開く決算となった。
経緯
赤字拡大の主因は集客費にある。同社の販売費率 (売上に占める販売費の比率) は 2025 年通期の 51% から、2026 年 Q1 にはさらに約 62% まで上昇した。売上の 6 割超を販売費が占める計算で、販管費 (販売・一般管理費) の膨張が利益を圧迫する構図が四半期を通じて続いている。
海外依存も際立つ。四半期の海外売上は 24.87 億元 (前年同期比 49.29% 増) で、連結売上に占める比率は 96.8% に達した。前年通期の 94.2% から一段と上がった。同社はこの数年、累計で数十億元規模の最終赤字を計上しており、海外で稼ぎながら海外で赤字を出す「焼銭」(キャッシュを燃やす) 局面が続く。
ショートドラマと並ぶもう一つの海外柱、ブラウザ事業の Opera (オペラ) は四半期売上 1.76 億ドル (前年同期比 23.16% 増)、月間利用者 2.88 億人と堅調だ。利益貢献のある Opera が、赤字のショートドラマ拡張を資金面で支える構図でもある。
構造解釈:稼ぐほど買う、買うほど薄れる
この決算が突きつけるのは、海外ショートドラマの「拡大と利益の非両立」である。流水もユーザー数も伸びる。だが伸ばすほど集客費がかさみ、最終損益は改善しない。
縦型ショートドラマの集客は、広告枠を買って利用者を呼び込む「買量」(パフォーマンスマーケティング、成果連動型の広告出稿) に強く依存する。視聴者は 1 本の作品に紐づき、続きを読む課金で初めて回収が立つ。だが課金単価が低く視聴の離脱も速いため、広告で 1 人を獲得しても回収が追いつかないと、規模拡大がそのまま費用拡大に化ける。販売費率が売上の 6 割を超えるまで上昇したことは、まさにこの構造の表面化である。
注意したいのは、この問題が制作費ではなく販管費に起因する点だ。同社は AI によるショートドラマ制作で 1 本あたりの制作コストを下げているとされる。だが仮に制作費を圧縮しても、売上の 6 割超に膨らんだ集客費の前では効きが小さい。微短劇の損益を決めるのは「作る安さ」ではなく「集める高さ」だという、コスト構造の重心が決算に表れている。
競争環境もこれを後押しする。海外ショートドラマでは中国系の ReelShort (リールショート) と DramaBox (ドラマボックス) が先行し、限られた広告在庫を奪い合う。同じ枠を複数社が入札すれば獲得単価は上がる。首位の MAU を維持するほど、首位を守るための広告費も上がる構造に置かれている。
示唆:集客費を逓減させられるか
海外ショートドラマの首位を保つほど、首位を守るための広告費もかさむ。昆侖万維が集客費を合理水準へ逓減させ、買量依存から抜け出せるかが、拡大と利益の非両立を解く鍵になる。微短劇が「広告で買い続けるジャンル」から「ブランドと作品力で人が来るジャンル」へ移れるか、同社の次の決算がその分岐を映す試金石になる。