韓国の有料放送、4 期連続で純減 — 3,615 万件、OTT 移行が加入基盤を侵食
韓国の有料放送加入者が 2025 年下期に 3,615 万件へ縮んだ。半期ベースで 4 期続けての純減で、唯一伸びる IPTV も増加率が 1% を割った。動画配信への乗り換えが土台を削り、通信各社は利幅の厚い IPTV へ退避する構図が鮮明になっている。
- 韓国の有料放送加入者は 2025 年下期に 3,615 万件へ減り、半期ベースで 4 期連続の純減となった
- 唯一伸びる IPTV も増加率が 1% 割れで、KT・SK Broadband・LG Uplus のケーブル離れを補い切れない
- Netflix・Coupang Play・TVING への乗り換えが加入基盤を侵食し、通信各社は IPTV へ退避している
概要
韓国の有料放送が縮み続けている。放送メディア通信委員会 (放送・メディア・通信を所管する韓国の規制機関) が 5 月 29 日に公表した 2025 年下期の統計によれば、有料放送の総加入者数は 3,615 万件だった。前の半期から約 7 万 6,000 件減り、半期ベースでは 4 期連続の純減となる。
ここでいう有料放送とは、月額料金を払って見るテレビ配信の総称で、回線経由の IPTV (インターネット・プロトコル・テレビ)、同軸ケーブルを使う総合有線放送、そして衛星放送の三つを指す。三つのうち IPTV だけが加入を伸ばし、ケーブルと衛星は減り続けている。その IPTV ですら伸びは鈍く、開示された純増 (約 12 万件) から計算した増加率は 1% を下回った。
加入者数で首位は KT で、912 万件・シェア 25.24% を握る。続いて SKブロードバンド が 669 万件、LGユープラス が 572 万件と並ぶ。シェアはそれぞれ 18.51%、15.82% で、通信大手三社が上位を占める構図は変わらない。だが、その三社が支える土台そのものが細りはじめている。
経緯
純減が始まったのは 2024 年上期だった。韓国の有料放送は長く右肩上がりを続けてきたが、この半期に初めて減少へ転じた。以後の数字は一貫して下向きで、今回でちょうど 4 期続けての縮小となる。
内訳を見ると、構造の歪みがはっきりする。IPTV は約 12 万件増えて 2,154 万件に達し、シェアは 59.57% まで上がった。一方でケーブルは 15 万件超を失って 1,194 万件 (33.01%)、衛星も 268 万件 (7.41%) へ細った。つまり IPTV の伸びが、ケーブルと衛星の流出を埋め切れていない。これが総数の純減を生んでいる。
規制側はこの流れを「動画配信 (OTT) サービスの拡大」に帰している。OTT (オーバー・ザ・トップ、回線網に縛られず届ける動画配信) への乗り換えが、有料放送の解約を促しているという見立てだ。同じ統計を報じた地元メディアも、縮小の主因を OTT 全般への移行に置く。受け皿には Netflix や クーパン・プレイ といった配信サービスが含まれる。
統計の集計方法も押さえておきたい。今回の数字は、IPTV・ケーブル・衛星の各事業者を対象に、半期ごとに加入実績を集める方式で、季節要因や一時的な販促の影響を均した中期の趨勢を映す。その趨勢が 4 期続けて下を向いた意味は重い。
構造解釈:コードカッティング
韓国で起きているのは「コードカッティング」の入り口である。コードカッティングとは、有料放送の契約を解約して配信サービスへ移る現象を指す。米国で先に進んだこの流れが、韓国でも半期 4 期連続の純減という形で表面化した。
注目すべきは、減っているのが特定の方式ではなく加入基盤そのものだという点だ。ケーブルや衛星だけが落ちているなら、IPTV への内部移行と読める。だが IPTV の増加率まで 1% を割った今、有料放送全体から人が抜けていると見るのが自然だ。OTT が単に古い方式を食っているのではなく、有料放送という器の外へ視聴者を運び出している。
その出口には複数の受け皿がある。世界規模の Netflix に加え、EC 企業が運営する クーパン・プレイ、国内勢の ティービング や ウェーブ がそれぞれ加入者を取り込んでいる。視聴時間という限られた資源を OTT が吸い上げるほど、月額の有料放送を二重に持つ動機は薄れる。これが解約を後押しする。
示唆:通信各社の IPTV 退避
通信各社の動きは、この土台の縮小を前提に読むと筋が通る。KT・SKブロードバンド・LGユープラスは、自前の動画配信から相次いで撤退している。LGユープラス は「U+モバイルTV」を 2026 年 5 月末で停止する。先行する SKブロードバンド・KT の自前 OTT 撤退に続く動きで、通信各社の単独配信が出そろって姿を消す。直接の配信競争を捨て、利幅の厚い IPTV に資源を寄せる選択である。
ただし退避先の IPTV も安泰ではない。増加率が 1% を割った以上、IPTV は「減らないだけの避難先」になりつつある。通信各社にとっての論点は、加入数の上積みではなく、一人あたり収益をどう守るかへ移っていく。地元報道はこの動きの背景に、世界勢との競争圧力とオリジナル制作費の高騰を挙げる。自前で配信を抱える負担に見合うリターンが取れないと判断したわけだ。