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Weverse、テック畑のヤン・ジュイル氏を社長に — ファンダムの「プラットフォーム化」を加速

Weverse が黒字転換の節目で、カカオ出身のテック畑経営者を社長に据えた。アーティストの所属に依存しない有料会員・メッセージングの「デジタル事業」を伸ばし、超ファン市場で Spotify や欧米メジャーと向き合う布陣を敷く。

TL;DR — 3 行で読む
  • HYBE 傘下の Weverse が、カカオ出身のテック畑経営者ヤン・ジュイル氏を社長に起用、6 月 1 日付で就任
  • Weverse は 2025 年に年間黒字化、四半期 MAU は 13.37 百万(前期比 +20%)と過去最高を更新
  • 有料会員・DM の「デジタル事業」を軸に超ファン市場で Spotify や欧米メジャーと向き合う

概要

K-pop のファンダムを束ねるプラットフォームが、音楽業界の外から経営者を招いた。HYBE(旧ビッグヒット、BTS の所属事務所を母体とする韓国の音楽・エンタメ企業)傘下の Weverse(ウィーバース、約 180 のアーティスト・コミュニティを抱えるファン向けアプリ)は 2026 年 5 月 27 日、ヤン・ジュイル氏を社長に起用すると発表した。就任は 6 月 1 日付で、前社長のチェ・ジュン氏の後を継ぐ。

ヤン氏はテック畑のキャリアが長い。NHN で開発者として出発し、NHN チケットリンクや音楽配信の NHN Bugs などで CEO を歴任。その後カカオに移り、メッセージアプリ「カカオトーク」部門の副社長、ブロックチェーン子会社グラウンドX の CEO、そしてポータル「Daum(ダウム)」を運営する AXZ の CEO を務めた。音楽そのものよりも、利用者を抱えるプラットフォームの運営を本職としてきた人物である。

起用は Weverse が事業の節目を迎えるなかで決まった。Music Business Worldwide によれば、Weverse は 2025 年に年間ベースで黒字化を達成し、月間アクティブ利用者数(MAU、月に一度以上使う人の数)は 2026 年第 1 四半期に 13.37 百万と過去最高を記録した。前期比では約 20% の増加で、245 の国と地域に広がり、累計ダウンロードは 1.55 億を超える。

経緯

Weverse は 2019 年 6 月にサービスを開始した。アーティストとファンが投稿でやり取りし、限定コンテンツや有料会員(メンバーシップ)、グッズ販売を一つのアプリに集約する設計で、BTS や SEVENTEEN といった HYBE 所属勢に加え、BLACKPINK やデュア・リパなど社外アーティストのコミュニティも抱える。

直近の業績は、利用者数の振れと収益性の両面で転機を示していた。MAU は 2025 年 6 月に 12 百万に達した後、第 4 四半期には 11.2 百万へ一度後退している。だが HYBE のイ・ジェサン CEO は決算説明会で、MAU が 1 月時点で「すでに 15% 増えた」と述べ、BTS の活動再開を追い風に回復軌道に乗ったと説明した。第 1 四半期の 13.37 百万は、その勢いが数字となって表れた格好だ。

収益化を支えるのは、アーティストの活動量に左右されにくい「デジタル事業」である。イ CEO によれば、メンバーシップや DM(アーティストからの個別メッセージ機能)を含むこの領域は年率約 30% で伸び、Weverse 売上の 10% 超を占める。会社側は、ヤン氏が多様な IT サービス分野で積み上げた経験が次の飛躍を後押しするとし、グローバルなファンダム・プラットフォーム市場で新たな標準を確立し、持続的な成長構造を築く狙いを掲げた。

構造解釈:ファンダムを「プラットフォーム」として運営する転換

テック畑からの社長起用は、Weverse の重心が「音楽の付帯サービス」から「ファンダムそのものを束ねるプラットフォーム」へ移ったことを映している。アーティストの新作や公演があるときだけ盛り上がる仕組みでは、収益は活動カレンダー次第で上下する。だが有料会員と DM のように、日々の関係を維持するための課金は、活動の谷間でも回り続ける。イ CEO がこれらを「アーティスト活動と無関係に利益を生む独立した収益モデル」と呼ぶのは、その性質を指している。

ここで効くのが、メッセージアプリやポータルを運営してきたヤン氏の経歴だ。多数の利用者を抱え、課金と継続利用を設計する仕事は、音楽の制作・宣伝とは別の専門性を要する。カカオトークや Daum で扱ってきた「巨大な利用者基盤をどう滞留させ、どう課金につなげるか」という問いは、Weverse が次に解くべき問いとほぼ重なる。

比較対象になるのは、同じく超ファン向けの月額メッセージ事業を持つ韓国勢だ。SM Entertainment 系の DearU(ディアユー)が運営する「Bubble(バブル)」は、アーティストの個別チャットに月額課金する先行モデルで、Weverse の DM はこれと正面から競合する。Weverse の強みは、コミュニティ・物販・チケット・メッセージを一つのアプリに集約し、複数の収益線を束ねられる点にある。テック畑の経営者を据えたのは、この「束ね役」としての運営力を強化する布石と読める。

示唆:超ファン市場で欧米と向き合う布陣

市場の射程は K-pop の枠を超えつつある。投資銀行ゴールドマン・サックスは超ファン(コア層)向け市場の規模を年間約 43 億ドルと見積もっている(同社の推計値で、確定した実績ではない点に留意)。Weverse はここに、コミュニティとメッセージングと物販を一体で持ち込むアプリとして食い込もうとしている。ヤン体制の最初の数四半期が、その方向を示すことになる。

WATCHLIST — 次に追う 3 つ
  1. デジタル事業の利益が活動カレンダーから本当に独立するか。年率 30% の伸びと売上比 10% 超という現状値が、ヤン体制下でどこまで底上げされるか
  2. Spotify や欧米の音楽メジャーとの距離の取り方。アプリ内連携の拡大と自前プラットフォーム拡張のどちらに比重を置くか
  3. グローバル展開と短期収益のせめぎ合い。245 の国と地域という到達を実需に変えられるか、それとも投資先行で黒字化の歩みが鈍るか

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