広告・収益化 · Advertising & Monetization

ネット接続テレビ広告は視聴時間だけでは利益にならない――販売権と費用を分けて比べる

コネクテッドTV(CTV、インターネットにつながるテレビ端末)とFAST(広告収入で無料提供する編成型動画配信)では、視聴時間を広告売上と同一視できない。販売権、測定条件、費用の範囲をそろえて利益を比べる。

TL;DR — 先に要点
  • コネクテッドTV広告では、事業者が販売できる広告表示を広告在庫と呼ぶ。広告在庫のうち売れた割合が販売率で、広告表示千回について実際に認識した売上が実現単価だ。認識売上は、売れた広告表示回数に実現単価を掛け、1,000で割る
  • テレビ配信基盤を運営するロクは、ホーム画面など自ら広告を出せる場所、ロク・チャンネルの動画広告在庫、配信契約の対価として提携先から得た広告在庫を販売できる。ロクは2025年年次報告書で、ユーチューブ内の動画広告在庫には当時アクセスできないと開示した
  • 本稿の広告管理粗利は、認識売上から広告枠の取得費、収益分配、配信・計測、コンテンツの直接費を引く。米国会計基準(GAAP、企業決算の共通ルール)による指標ではなく、各社が共通して開示する指標でもない

概要

テレビの視聴時間が増えても、配信事業者の広告売上が同じ幅で増えるとは限らない。売上になるのは、事業者が販売できる広告表示(広告在庫)のうち、実際に売れた分だけだ。

視聴計測会社ニールセン(Nielsen)は、米国のテレビ視聴に占める広告付き番組の比率を調べた。

2025年第2四半期を対象にした調査だった。

広告付き番組の比率は73.6%だった。この値は視聴全体の構成であり、特定の配信事業者が販売できる広告在庫ではない。

広告在庫のうち売れた割合を販売率と呼ぶ。広告表示千回について実際に認識した売上が実現単価だ。

販売可能機会に販売率を掛けると、売れた表示回数になる。認識売上は、売れた表示回数×実現単価÷1,000で求める。

経緯

テレビ配信基盤を運営するロク(Roku)が販売できる範囲は、視聴画面のすべてではない。ロクはホーム画面など、自ら広告を出せる場所を販売する。

ロクは、ロク・チャンネル内の動画広告在庫も販売する。さらに、配信契約の対価として提携先から割り当てられた広告在庫も扱う。

提携先から得る広告在庫を、ロク・チャンネル内だけの在庫として数えてはいけない。広告在庫が生じる契約と販売権を分けて確認する必要がある。

ロクは2025年年次報告書で、ユーチューブ内の動画広告在庫には当時アクセスできないと開示した。

販売可能な機会は、広告を売る権利、対象地域、利用者同意の条件をそろえてから比べる。同意が必要な利用目的では、同意を得ていない視聴を同じ条件の広告在庫として集計しない。

広告形式の比較は、ロクのホーム画面広告とロク・チャンネルの一時停止広告に限る。比較前に、各報告書が広告在庫と売上をどう定義するかを確認する。

構造解釈:広告在庫と利益を分けて考える

配信技術会社アマギ(Amagi)は、2026年7月1日に調査報告書を公表した。

番組表に沿って動画を届ける単位を、ここではチャンネル配信と呼ぶ。6月版の報告書は、約6,500件のチャンネル配信を追跡した。

追跡対象のFAST視聴時間は前年同期比55%増えた。これは追跡対象の視聴時間の増加であり、市場全体の利益を示さない。

実務者28人への調査では、86%が、番組名やジャンルなどの付帯情報(メタデータ)を配信先ごとの形式へ直す作業を負担に挙げた。

インタラクティブ・アドバタイジング・ビューロー(IAB、デジタル広告の業界団体)は、測定環境の分断を指摘する。広告の表示・再生状態を伝えるデータ(測定信号)が、配信先によってそろわない。

ビューアビリティは、広告が画面上で見える状態だったかを示す測定項目だ。比較には、ビューアビリティを含む測定項目と集計範囲の確認が要る。

動画配信会社ネットフリックス(Netflix)は、利用者が操作できる動画広告と、広告素材を組み合わせる動的テンプレートを発表した。

取得できる測定項目は、ネットフリックスの測定仕様を確認しなければ決められない。広告形式が新しくても、測定条件を確認せず販売可能機会へ加えることはできない。

示唆:同じ条件で広告の採算を比べる

本稿では、認識売上から広告枠の取得費、収益分配、配信・計測、コンテンツの直接費を引いた額を広告管理粗利と呼ぶ。

広告管理粗利は米国会計基準(GAAP、企業決算の共通ルール)の指標ではない。各社が共通して開示する指標でもなく、各社の売上原価と一致しない場合がある。

広告管理粗利から広告営業や運用の販売費を引いた額を、販売費控除後利益と呼ぶ。両者を混ぜると、営業体制の差を広告在庫の差と誤認する。

売上の総額表示は受取額全体を売上にし、純額表示は提携先への支払い後の額だけを売上にする。ロクは、契約で主な提供責任を負うか、仲介するかに応じて表示方法を判断する。

総額表示と純額表示が異なる会社を売上だけで比べても、広告運営の効率差は分からない。広告管理粗利と販売費控除後利益まで同じ範囲にそろえる必要がある。

比較の順番は、販売可能機会の条件をそろえ、認識売上を計算し、直接費と販売費を分けて引く。この順番なら、売上表示の差と運営効率の差を切り分けられる。

WATCHLIST — 次に追う 3 つ
  1. 広告を販売する権利、対象地域、利用者の同意条件をそろえ、販売可能な広告表示を比較できるか
  2. ロクのホーム画面広告とロク・チャンネルの一時停止広告で、報告書の定義を確認できるか
  3. 売上の総額と純額、直接費、販売費の範囲をそろえ、利益を再計算できるか

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