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独カルテル庁、Banijay×All3Media の制作合弁を承認 — 「買い手が強い」市場が制作統合を通す

ドイツの Bundeskartellamt(連邦カルテル庁)が、BanijayAll3Media の独制作事業の合弁を承認した。第三者向けTV制作で国内最大の供給者が生まれるが、当局は買い手である放送局が自前で作れる点を重視した。制作の規模統合を進める世界的な流れと、それでも主導権が買い手側に残る構図が同時に表れている。

TL;DR — 3 行で読む
  • BundeskartellamtBanijayAll3Media の独制作事業の合弁を 6 月 2 日に承認。第三者向けTV制作で国内最大の供給者が生まれる
  • 当局は両社の強みが補完的で、買い手の放送局(RTL・ProSiebenSat.1・ARD・ZDF)が自前で制作できる点を、競争上の懸念を抑える要因と判断した
  • BanijayAll3Media は 2026 年 3 月に売上高約 44 億ユーロ規模で世界統合を発表済み。配信・放送への交渉力を規模で確保する動き

概要

制作会社が大きくなっても、強いのは買い手のままだ——ドイツの競争当局の判断は、その構図を映している。連邦カルテル庁 Bundeskartellamt は 6 月 2 日、テレビ番組制作大手 BanijayAll3Media のドイツ事業の合弁を承認した。両社のドイツ法人を一つにまとめる計画である。

承認の対象は、Banijay 傘下の EndemolShine Germany と Brainpool TV、All3Media 傘下の Filmpool Entertainment(ケルン)が手がける制作事業だ。前者は『Wer wird Millionär?(クイズ$ミリオネア)』『The Masked Singer』『Big Brother』など、後者は『Berlin – Tag & Nacht』『The Traitors』『Undercover Boss』などを制作してきた。

当局は、合弁が「出来高ベースで第三者向け一般向けTV制作の国内最大の供給者」になると認めつつ、競争を大きく損なう恐れは小さいと結論づけた。長官のアンドレアス・ムントは、買い手が RTL・ProSiebenSat.1・ARD・ZDF など少数の大手放送局に限られ、しかも各局が自前でも制作できる点を指摘している。

経緯

合弁の母体となる世界統合は、2026 年 3 月にさかのぼる。Banijay は、投資家連合 RedBird IMI(米 RedBird Capital と アブダビの IMI による合弁)と組み、英 All3Media を統合すると発表した。新グループの社名は引き続き Banijay とし、両者の出資は 50:50 となる。

統合後の規模は大きい。Banijay 公式によれば、両社を合算した 2024 年の売上高は約 44 億ユーロ、調整後 EBITDA(利払い・税・償却前の利益)は約 6 億 9,000 万ユーロにのぼる。傘下の制作レーベルは Banijay の約 130 と All3Media の約 40 を合わせ、計約 170 に達する。さらに 26 万時間超のコンテンツ・カタログと約 45 のフォーマットを抱える陣容となる。CEO にはマルコ・バセッティが就く。

ドイツの承認は、この世界統合を各国で成立させるための競争審査の一つである。両社はすでにドイツ市場で大きな存在であり、合弁により制作の集中がどこまで進むかが審査の焦点となった。

構造解釈:制作を束ねても主導権は「買い手」に残る

今回の判断には、コンテンツ制作市場の力学が凝縮されている。制作会社がいくら規模を統合しても、その番組を買うのは放送局や配信事業者であり、彼らが自前でも作れる限り、制作側の交渉力は頭打ちになる、という構図だ。

当局がこの合弁を通した論理がそれを示す。買い手である大手放送局は数が少なく、しかも内製の制作能力を持つ。だから供給側が一つにまとまっても、買い手は値段や条件を抑える力を保てる。一見すると「最大の制作会社の誕生」は競争を損なうように見えるが、買い手が強い市場では集中の害が出にくい、という読み筋である。

だが同じ事実は、制作会社がなぜ統合を急ぐのかも説明する。買い手が強いからこそ、売り手は規模で対抗するしかない。世界的なヒットフォーマットや人気レーベルを一手に束ねれば、配信大手や放送局との交渉で「この棚は外せない」という立場を作れる。Banijay が掲げる「配信プラットフォームに対する位置づけの強化」とは、まさにこの買い手への交渉力の確保にほかならない。

放送局や配信が制作を内製化するほど、独立系制作会社は規模でしか存在感を保てなくなる。制作統合の波と、買い手による内製化の波は、同じ「主導権争い」の表と裏なのである。

示唆:制作統合がコンテンツ調達をどう変えるか

制作統合の波は、買い手が強い市場でこそ承認されやすい。だが規模で得た棚の厚みが配信・放送との取引条件を実際に動かせるのか、それとも買い手の内製化が主導権を握り続けるのか——制作の主導権が供給側と買い手のどちらに傾くかは、各国の審査の帰結とともにこれから定まる。

WATCHLIST — 次に追う 3 つ
  1. ドイツ以外の競争審査の帰結。英・米・EU 各法域で審査が続き、ドイツの「買い手が強い」論理が他市場でも通用するかが問われる
  2. 統合後の Banijay が配信大手との取引条件をどこまで動かせるか。約 170 のレーベルと 45 のフォーマットという棚の厚みがライセンス料や権利の持ち方にどう反映されるか
  3. 放送局・配信側の内製化がさらに進むか。供給側の集中が進むほど、買い手は自前制作や別の独立系への発注を増やして対抗しうる

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