韓国ウェブトゥーン IP がハリウッドと新興市場へ — 内製スタジオと現地リメイクで「配信」から「映像 IP の源泉」に
WEBTOON の英語オリジナル作品が米実写映画に、カカオ 作品がインド版ドラマに、人気作はプライム・ビデオでアニメ化される。ウェブトゥーン各社は連載を売るだけの場から、映像の原作 IP を自ら抱えて世界へ出す垂直統合の段階へ移りつつある。
- WEBTOON の英語オリジナル作品『ShootAround』(2,800 万ビュー) が米ライオン・フォージと組んで実写映画化、映像内製の Webtoon Productions を前面に出す
- カカオ 作品『Stay Together or Not』はインド版ドラマ『Love Always』(仮) に再構成され、JioHotstar で年内配信予定 — 韓国ウェブトゥーン初の正式インド・リメイク
- 人気作『Lore Olympus』はジム・ヘンソン・カンパニーと組み プライム・ビデオ でアニメ化 — 各社は連載配信から映像 IP の源泉へ垂直統合する
概要
韓国発のウェブトゥーン (縦スクロール型のデジタル漫画) が、原作 IP として映像の世界へ本格的に染み出している。The Korea Times が 5 月 8 日に報じたところによると、ハリウッドの実写映画化からインドの現地リメイクまで、複数の案件が同時に動き始めた。
象徴的なのが『ShootAround』だ。WEBTOON の英語オリジナルの人気作で、累計 2,800 万ビューを集めたゾンビ・ホラーコメディである (作者は Suspu)。これを実写映画化するのが、米ライオン・フォージ・エンターテインメント (David Steward II が創業した独立系制作会社) と、WEBTOON の映像内製部門 Webtoon Productions だ。脚本は『セヴェランス』『The Night Agent』のアヤナ・K・ホワイトが手がける。
注目すべきは、ウェブトゥーン各社が連載を「売る」立場から、映像の原作 IP を自ら「抱えて出す」立場へ移っている点だ。配信プラットフォームが、映像 IP の源泉へと垂直統合 (川上から川下までを自社で束ねること) を進めている。
経緯
きっかけは一つの案件ではなく、数か月の間に重なった複数の動きである。
まず米国市場。前述の『ShootAround』に加え、人気作『Lore Olympus』が動いた。ギリシャ神話のペルセポネとハデスを下敷きにした英語オリジナルの作品で、世界中に熱心なファンを抱える。これをジム・ヘンソン・カンパニーと Webtoon Productions、アマゾン MGM スタジオが組んでアニメシリーズ化し、プライム・ビデオ で 240 以上の国と地域へ配信する。1 月 20 日の WEBTOON の公式発表によれば、原作は 2017 年の連載開始以来 18 億ビュー超を記録した。ヘンソン社にとっては初の成人向けアニメ制作にあたる。
次に新興市場。カカオエンターテインメント の作品『Stay Together or Not』が、インド版ドラマ『Love Always』(仮題) に再構成される。製作は韓国系の Kross Pictures で、JioHotstar が年内に配信する予定だ。The Korea Times はこれを「韓国ウェブトゥーンが正式にインドでリメイクされる初の事例」と位置付けている。
英語圏の小説投稿プラットフォーム由来の作品も同じ流れに乗る。『Love Me, Love Me』は 2 月にプライム・ビデオで配信され、世界ランキングで首位に達したと報じられ、続編の制作が決まった。
構造解釈:連載を「売る」から原作 IP を「抱えて出す」へ
今回の一連の動きが示すのは、ウェブトゥーン各社の役割が「連載の流通」から「映像 IP の源泉」へとずれていることだ。
従来、ウェブトゥーンは読者にコンテンツを届ける配信の場であり、映像化はスタジオへ原作権を売る一回限りの取引だった。だが Webtoon Productions のように映像内製の器を持てば、自社で抱える数千本の連載が、そのまま制作・出資・世界配信まで束ねられる原作の在庫になる。ライオン・フォージやヘンソン社、アマゾン MGM スタジオのような外部の制作・配信パートナーと組みつつ、企画の起点を自社 IP に置く構図だ。
なぜ世界の制作会社がウェブトゥーン IP に動くのか。The Korea Times は業界関係者の言葉として、原作がすでに「練り込まれた物語」を備え、既存のファンが初動の認知を支える点を挙げる。完成された脚本に近い設計図と、立ち上がり済みの観客が同時に手に入る——これが従来の漫画原作と比べた相対的な強みである。『ShootAround』の 2,800 万ビュー、『Lore Olympus』の 18 億ビューといったビュー数は、企画段階で示せる需要の予測値として機能する。
もう一つの軸が地理だ。米国向けには英語発の作品を実写・アニメで投入し、インド向けには韓国作品を現地ドラマへ作り替える。同じ IP 戦略でも、市場ごとに「英語原作の直行」と「現地リメイク」を使い分けている。
示唆:ウェブトゥーン IP の映像化が次に試すこと
ウェブトゥーン発の映像化は、原作の規模だけでは成否を保証しない。
- ビュー数が興行・視聴に変換されるか。2,800 万ビューや 18 億ビューは認知の指標だが、原作ファンの動員と一般視聴者の獲得をどちらも満たせるかが最初の試金石になる
- 現地リメイク・モデルの再現性。インドの『Love Always』が成功すれば カカオ や ネイバーウェブトゥーン は東南アジアや中南米へ横展開でき、振るわなければ「現地化は重い」という逆の学習も起こる
- 内製スタジオと外部パートナーの取り分。Webtoon Productions が制作・出資に踏み込むほど一回取引から継続収益へ変わるが制作リスクも自社に寄り、プライム・ビデオ を持つアマゾン等との出資比率と IP 権利の配分が垂直統合の成否を決める
— Sources / 情報源
- The Korea Times: Webtoon IP gains traction in Hollywood, emerging markets
- Variety: 'ShootAround,' Zombie Webcomic, Becoming Live-Action Film From Lion Forge Entertainment and Webtoon Productions
- Variety: 'Lore Olympus' Animated Series Greenlit at Amazon
- WEBTOON Entertainment (公式): Amazon MGM Studios Greenlights New Animated Series, Lore Olympus