TVING、20〜30 代の精密狙いで連続ヒット — 大型予算ではなく IP とターゲティングで配信の採算を底上げ
TVING が「ユミの細胞たち」シーズン 3 と新作の連続ヒットを、巨額制作費ではなく 20〜30 代への精密なターゲティングで作った。同四半期に約 192 億ウォンの営業赤字を抱える同じプラットフォームで、採算改善の道筋を示す動きだ。
概要
韓国の動画配信サービス TVING(ティービング)が、巨額の制作費を投じずに連続ヒットを出した。鍵は 20〜30 代という視聴層への狙いの精度である。看板となったのは恋愛ドラマ「ユミの細胞たち」シーズン 3 と、新作「The Legend of Kitchen Soldier」の 2 本だ。
The Korea Times によれば、両作とも豪華キャストや大作的な設定に頼らず、日常の感情と人間関係を軸にした物語と高い完成度で支持を集めた。スター頼みでも予算頼みでもなく、サービスの個性を明確にし、視聴層を正確に絞ることを優先した結果だという。配信業界で常態化した「制作費の競り上げ」とは別の路線で、オリジナル作品が突破口を開けることを示す事例として注目される。
経緯
「ユミの細胞たち」シーズン 3 は、有料会員への寄与(有料会員の獲得・維持にどれだけ貢献したかの指標)で公開初週から最終週まで 1 位を維持した。The Korea Times は、本作がシーズン 1 と比べて 226% の成長を記録し、シリーズ全体で最も強い成績を残したと伝えている。各シーズンの伸びも段階的で、シーズン 2 はシーズン 1 比で 88% 増、シーズン 3 はシーズン 2 比で 73% 増だった。
本作は約 4 年ぶりの新シーズンで、エピソード 1・2 を 4 月 13 日に配信開始した(STARNEWS)。公開直後に TVING の有料会員数で 1 位に立ったことは別の報道でも確認できるが、シーズン間の具体的な成長率は The Korea Times の数字に依拠している点は留意したい。
もう 1 本の「The Legend of Kitchen Soldier」は、公開週の有料会員寄与で TVING が過去 3 年に出した全ドラマの中で最高を記録したという。いずれも俳優の知名度や予算規模ではなく、ターゲット層に刺さる題材と作り込みで数字を伸ばした構図だ。
構造解釈:予算でなく“狙いの精度”で採算を作る
ここで効いているのは、制作費の絶対額ではなく「誰に届けるか」の解像度である。TVING は現実的な規模で作った作品を高い水準まで磨き、20〜30 代という中核層に正確に当てた。配信の採算は「1 作にいくらかけたか」だけでなく「その作品が何人の有料会員を呼び、何人を引き留めたか」で決まる。前者を抑えながら後者を最大化すれば、1 作あたりの採算(ユニットエコノミクス)は改善する。
「ユミの細胞たち」のシーズンごとの上積みは、その手応えを裏づける。シリーズもの(同じ IP を続編で重ねる作品)は、過去シーズンで育てたファンを次のシーズンの初週寄与へそのまま持ち越せる。新規の話題作を毎回ゼロから立ち上げるより、獲得コストが構造的に低い。シーズン 1 比 226% という伸びは、IP を継続資産として運用した成果と読める。
ただし、同じプラットフォームが描く損益は厳しい。CJ ENM の 2026 年第 1 四半期決算で、TVING は約 192 億ウォンの営業赤字を計上した(Seoul Economic Daily)。要因はワールド・ベースボール・クラシック(WBC、野球の国際大会)の中継権費用と、広告の閑散期が重なったことだ。TVING を含むメディアプラットフォーム部門全体でも約 212 億ウォンの営業赤字となった。
一方で、伸びている指標もある。TVING の会員数は前年同期比 37.3% 増え、広告収入も WBC など独占コンテンツを追い風に同 35.3% 伸びた(The Asia Business Daily)。つまり、ヒットの作り方と全体の採算は、同じプラットフォーム上で別々の力学に従っている。
示唆:IP とターゲティングで配信の採算を底上げできるか
TVING の事例が示すのは、配信の収益改善が必ずしも投資拡大を要しないという仮説だ。予算競争に背を向け、IP の継続運用と視聴層の精密な特定で 1 作あたりの採算を押し上げる。同じプラットフォームが四半期では約 192 億ウォンの赤字を抱える中で、その道筋を作品レベルで提示した点に意味がある。
- 作品単位の好調が部門損益にどこまで波及するか。コンテンツの寄与は強くても、中継権や広告環境という外部要因が損益を左右する構造は続く
- KBO(韓国プロ野球)シーズンが本格化する第 2 四半期以降に、会員数と採算がどこまで戻るか。回復はスポーツ需要に依存しやすい
- 20〜30 代精密狙いと IP 継続運用のモデルが、続編のないオリジナル新規作にも横展開できるか。シリーズものの低い獲得コストに頼らずに同じ採算を出せるか
— Sources / 情報源
- The Korea Times: Tving's bet on Korean viewers in their 20s and 30s pays off with 'Yumi's Cells,' 'The Legend of Kitchen Soldier'
- Seoul Economic Daily: CJ ENM Target Prices Slashed After Shock Q1 Earnings
- The Asia Business Daily: CJ ENM Posts 1.5 Billion Won Q1 Operating Profit... TVING and Overseas Sales Drive Growth
- STARNEWS: 'Yumi's Cells 3' back after four years, No. 1 in TVING paid subscribers