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Sony Music、ストリーミングで過去最高益 — それでも来期『減益』見通しが映す音楽配信の成熟

Sony Music の 2026 年 3 月期は営業利益 4,470 億円(+25%)で過去最高。ストリーミングと『鬼滅の刃』が牽引した。だが来期は売上横ばい・営業益 11% 減の見通し。ヒット依存と一時的利益の剥落が、音楽配信が成長から成熟へ移る局面を映している。

TL;DR — 3 行で読む
  • Sony Music の FY2025(2026/3 期)は営業利益 4,470 億円(+25%)で過去最高。ストリーミングと『鬼滅の刃』が牽引した
  • 録音原盤のストリーミングはドルベース +9%、音楽出版は +14%。だが来期は売上横ばい・営業益 11% 減(4,000 億円)の見通し
  • 減益要因は一時的利益の剥落と劇場ヒットの反動。Sony MusicSpotify らの関係でも、音楽配信は量から単価・成熟の局面へ

概要

Sony Music は 5 月 8 日(ソニーグループ通期決算の一部)、2026 年 3 月期(FY2025)の業績を示した。サブスクの拡大が利益を押し上げ、過去最高益となった。主な数字は次のとおり。

  • 売上 2.12 兆円($13.3B、+15%)
  • 営業利益 4,470 億円($2.8B、+25%)で過去最高
  • 録音原盤のストリーミングはドルベースで +9%、音楽出版のストリーミングは +14%

ライブイベントや『鬼滅の刃』フランチャイズの貢献も大きい。

ところが、来期(FY2026)の見通しは対照的だ。売上はほぼ横ばいの 2.14 兆円を見込む一方、営業利益は約 11% 減の 4,000 億円に落ちるとした。減益の主因は、前期にあった一時的な再測定益(remeasurement gains)が剥落すること、そして前年に劇場公開された『鬼滅の刃』の寄与が薄れることである。「過去最高益の翌期に減益」という逆説が、音楽配信の現局面を映している。

経緯

音楽産業はストリーミングのサブスク化によって長期の成長軌道に乗ってきた。Sony Music も録音原盤・音楽出版の両面でストリーミング収益を伸ばし、レーベルとして Spotify 等の DSP へ楽曲を供給する権利者の立場から、値上げや配信条件の交渉力を高めてきた。今期の過去最高益は、その成長の到達点である。

だが成長率には変化が見える。ドルベースのストリーミング成長は録音原盤で +9% と、二桁を割り込む水準に落ち着いてきた。サブスクの普及が成熟し、契約者数の純増だけでは伸びにくくなっている。そこで効いてくるのが値上げ(単価)と、ヒット作の有無である。今期は『鬼滅の刃』という強力なヒットがあったが、来期はその反動が出る。ヒットの年次変動が、利益を大きく振れさせる構造が残っている。

構造解釈:量の成長から『単価とヒット』への依存

Sony Music の決算が示すのは、音楽配信が「契約者数の量」で伸びる段階を過ぎ、「1 契約あたり単価」と「ヒットの当たり外れ」に利益が左右される成熟段階に入ったことだ。ストリーミングの普及率が上がりきると、成長は加入者の純増ではなく、価格の引き上げ(UMG のいう Streaming 2.0 のような値上げ)と、その年に大型ヒットが出るかどうかに依存するようになる。

過去最高益の翌期に減益を見込むのは、事業が弱ったからではなく、前年が特殊に強かったからである。一時的な再測定益や劇場ヒットの寄与は、毎年は続かない。レーベルにとっての本質的な課題は、こうした年次の振れを越えて、値上げと多面的な IP 活用(ライブ・グッズ・映像化)で底上げを続けられるかにある。

音楽配信の成長物語は、加入者の量から単価とヒットの質へと、語り口を変えている。映像 SVOD が加入者数の開示をやめて利益率で語り始めたのと同じく、音楽でも「どれだけ増えたか」より「1 人からいくら稼ぎ、どのヒットで跳ねたか」が問われるようになった。成長の鈍化は衰退ではなく、市場が成熟して評価の物差しが変わったことを意味する。

示唆:音楽配信の『成熟』が問うもの

Sony Music の FY25 は、音楽配信が成熟局面に入り、利益が単価とヒットに左右される構造になったことを示した。過去最高益と来期減益見通しの併存は、その成熟の象徴である。

WATCHLIST — 次に追う 3 つ
  1. ストリーミングの値上げ(単価)が、加入者数の伸び鈍化をどこまで補えるか
  2. 『鬼滅の刃』のような劇場・映像ヒットへの依存を、ライブやカタログの底力でどれだけ平準化できるか
  3. 生成 AI 楽曲のライセンス(対立と協調)が、権利者の単価交渉力をどう左右するか

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