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SBS、Kドラマを「シリーズ化」へ転換 — AI で続編の制作費 6 割減、配信ロングテールを狙う地上波の供給戦略

韓国地上波 SBS が、ヒット作の続編量産を 2026〜27 年編成の軸に据えた。配信のロングテール収益と高単価広告を狙い、Studio S は AI で続編の制作費を 6 割超削減する。NetflixDisney+ に作品を供給する地上波が、使い捨て型から『IP 使い切り』へ動く。

TL;DR — 3 行で読む
  • SBS が 6 月 1 日のドラマ説明会で、ヒット作の続編量産(シリーズ化)を 2026〜27 年編成の軸に据えた。『グッドパートナー』続編を後半に、『The Judge From Hell』続編を 2027 年に投入
  • 傘下の Studio S は、生成 AI を反復・群衆シーンに使い、続編の該当場面の制作費を従来比 6 割超削減したと説明
  • NetflixDisney+ に作品を供給する地上波が、単発の使い捨て型から、配信で価値が積み上がる『IP 使い切り』へ転換する

概要

韓国の民放地上波 SBS が、ヒット作の続編を量産する「シリーズ化」を編成戦略の柱に据えた。6 月 1 日のドラマ説明会で、2026〜27 年のラインナップを公開したものだ。

編成本部長のキース・キム氏は「今後のラインナップのキーワードは『シリーズの力(series power)』だ」と述べた。具体的には、2026 年後半に法廷ドラマ『グッドパートナー』の続編、2027 年に『The Judge From Hell(地獄から来た判事)』の続編(パク・シネ続投)や新作『Dash』などを投入する。財閥の御曹司が刑事になるアクション『Flex X Cop』も続編が予定される。

注目は制作費だ。傘下のドラマ制作スタジオ Studio S の代表ホン・ソンチャン氏は、生成 AI(指示文から映像や画像を作る AI)を反復シーンや群衆描写に使うことで、従来の手法で同じ場面を作る場合と比べ制作費を 6 割超削減できたと説明した。続編を出しやすくする土台が、ここにある。

経緯

韓国ドラマは長く「単発」が基本だった。1 シーズンで完結させ、続編は例外。理由は二つある。一つは、続投する人気俳優の出演料が跳ね上がること。もう一つは、放送と並行して撮る「生放送的」な過密スケジュールで、続編の座組みを再び組むのが難しいことだ。結果として、ヒット作でも配役を変えるか、続編自体を断念する例が多かった。

SBS はこの壁を、少数のシリーズで崩してきた。配車アプリの闇を描く『Taxi Driver(模範タクシー)』や医療ものの『Dr. Romantic(浪漫ドクター)』は、複数シーズンを重ねた数少ない成功例である。今回はこの例外を、編成の常態へ広げる。キム氏は「これだけ多くのシーズン制ドラマを作り続けられるのは、俳優や制作陣と築いた信頼があるからだ」と語った。出演料と日程の問題を、長期の関係で吸収する発想だ。

そこに AI が重なる。Studio S の続編は、過去作の世界観や舞台を引き継ぐぶん、似た背景や群衆シーンを作り直す手間が大きい。この反復部分を AI で圧縮すれば、続投俳優の出演料が上がっても総コストを抑えられる。ホン氏は「AI は作り手から権限を奪わない。強力な支援ツールだ」と位置づけた。韓国の制作現場での AI 活用は以前から進んでおり、SBS 系の制作会社も脚本推敲や映像生成に ChatGPT や画像生成 AI を使い始めていた(The Korea Times)。続編戦略は、その延長線上にある。

構造解釈:地上波の「IP 使い切り」戦略

ここで起きているのは、地上波が「単発の使い捨て」から「IP 使い切り」へ移る転換である。一度当てた作品の世界観・登場人物・タイトルを、続編で何度も使い回し、価値を積み上げる。配信時代に、この発想が合理的になった。

鍵はロングテールだ。配信では、新作公開時の山だけでなく、その後も長く視聴され続ける裾野(テール)が収益を生む。続編が出れば、過去シーズンが再び見られ、カタログ全体の視聴時間が伸びる。SBS のドラマは地上波放送後に NetflixDisney+ へ供給される。たとえば『The Judge From Hell』は海外では Disney+ と Hulu で配信されている。続編で「シリーズ」として束ねれば、グローバル配信での発見されやすさと一気見の動機が高まる。認知をゼロから作る新作より、既知の世界観を足す続編のほうが、配信での回収が読みやすい。

同時に、地上波広告でも続編は強い。視聴が読める続編枠は、広告主にとって安心して買える在庫であり、単価が高い。配信のロングテールと地上波の高単価広告、その二つを同じ作品で取りにいく。ここに AI で続編の制作費を削れば、利益の出る幅はさらに広がる。

この構図で見落とせないのは、地上波が配信の「競合」であると同時に「供給者」でもある二面性だ。SBS は自局の放送枠で視聴率を取りつつ、同じ作品を Netflix や Disney+ に売って世界の視聴と収益を得る。シリーズ化は、その二面性を最大化する装置として働く。配信側から見れば、当たった韓国 IP の続編が安定供給される利点がある。SCMP も、Netflix の『今、私たちの学校は』続編や Disney+ の『A Shop for Killers(殺し屋向けの店をめぐるアクション)』続編など、配信主導の続編が 2026 年に相次ぐと整理している。地上波と配信の双方で、続編へ向かう力が働いている。

示唆:配信時代の地上波コンテンツ供給モデル

SBS の動きは、地上波がグローバル配信のコンテンツ供給源として生き残るための一つの型を示す。自前の配信サービスに巨額を投じ続けるより、世界到達を持つ配信大手にシリーズ化した IP を供給し、ロングテールと広告で回収する。受け手の配信側も、実績ある世界観の続編を確実な在庫として確保できる。AI による制作費削減は、この供給を採算に乗せる潤滑油になる。

WATCHLIST — 次に追う 3 つ
  1. シリーズ化作品の配信での実績。続編が NetflixDisney+ のグローバル順位や視聴時間でロングテールを実証できるか
  2. AI 制作費削減の検証可能な開示。「6 割減」が一部シーンの限定値にとどまるのか、Studio SSBS の制作予算・決算に全体として表れるのか
  3. 他局への波及。シリーズ化と AI の組み合わせが KBS・MBC や CJ ENM 系の tvN にも広がり、韓国ドラマ全体の標準になるか

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