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Prime Video も週間 Top 10 を公開開始 — だが「ヒットの物差し」は各社バラバラのまま

Amazon が 6 月から Prime Video の週間 Top 10 公開を始め、主要 SVOD のランキング開示が出揃った。だが集計の物差しは各社バラバラで、第三者の監査もない。スペインの調査会社は、チャートが視聴実態を映すだけでなく、視聴を誘導する側にも回りうると分析する。配信時代の「ヒット」を誰が定義するのかを考える。

TL;DR — 3 行で読む
  • Amazon が 6 月から Prime Video の週間 Top 10 公開を開始(オリジナル作品限定・全世界・言語別)。週間リストを公表する SVOD は Netflix に続き 2 社目となった
  • 集計指標は各社バラバラ — Netflix は視聴時間由来の views、Amazon は視聴アカウント数で、横並び比較は成立せず第三者の監査もない
  • 調査会社 バルロベント は、ランキングが視聴実態を映すだけでなく視聴を誘導する側にも回りうると分析。チャートが販促資産化する構造に透明性の問いが残る

概要

配信大手の「今週のヒット」リストがまた一つ増えた。Amazon は 6 月、傘下の Prime Video で最も視聴されたオリジナル作品の週間 Top 10 を公式ニュースサイトで公開し始めた。初回のリストは 5 月 25〜31 日分で、映画は『Jack Ryan: Ghost War』、シリーズは『Off Campus』が首位だった。

グローバルの週間リストを毎週公表する SVOD(定額制動画配信)は、数年前から続ける Netflix に Prime Video が加わって 2 社目になる。Disney+ や HBO Max もアプリ内の Top 10 表示で視聴を誘導しており、「人気の見える化」は業界の標準装備になった。この潮流が勢いづいたのは、2021 年の『イカゲーム』の世界的ヒット以降のことだ。

そこに冷や水を浴びせる分析も出た。スペインの視聴調査会社 バルロベント・コムニカシオン(テレビ・配信の視聴動向を調べる会社)は、各社の Top 10 が視聴者の実際の行動をほとんど映していないとするレポートをまとめた。業界誌 Advanced Television が 6 月 11 日に伝えた。

経緯:出揃った Top 10、揃わない物差し

Amazon のリストは「月曜から日曜までに作品を視聴した全世界のアカウント数」で順位を付ける。視聴時間の長さは問わず、シリーズは全エピソードの視聴を合算する。シリーズを丸ごと数えるこの合算は、米調査会社ニールセンの配信チャートと似た扱いだと米業界誌は指摘する。一方で Netflix が公開するような時間ベースの指標は、当面公開しない方針だと米業界誌 The Hollywood Reporter は伝えている。これは視聴時間の総量を作品の尺で割った「views」を指す。

つまり同じ「週間 Top 10」でも、数えているものが違う。Netflix は視聴の量(時間由来の views)、Amazon は視聴の広がり(到達アカウント数)。対象も Netflix は全カタログ、Amazon はオリジナル作品限定で、アプリ内に表示される国別・短期間のリストとも別物だ。横並びの比較は最初から成立しない。

バルロベントの分析はこの不揃いを正面から突く。各社は算出方法をほとんど開示せず、視聴時間や推定 views といった追加指標を公開している大手は Netflix だけ。その Netflix の数字も第三者の監査を受けておらず、国別の内訳もない。何 % の視聴者が完走したのか、1 つの視聴を何人で共有しているのか、どこから 1 視聴とカウントするのか。いずれも外からは見えない「盲点」として残る。

構造解釈:「ヒットの定義権」はプラットフォームが握ったまま

ランキングは中立な実績表ではなく、配信サービスの製品であり販促資産だ。Top 10 への掲載自体が作品の露出を増やし、試し見を促し、チャートに残り続ける作品の商業寿命を延ばす。チャートは人気を「測る」装置であると同時に、人気を「作る」装置でもある。バルロベントの言葉を借りれば、本物の需要とプラットフォームが演出した可視性の境界は曖昧になっていく。

テレビ時代の視聴率は、第三者の調査会社が同じ物差しで全局を測る「業界の共通通貨」だった。配信時代にはそれが無い。各社は自社に都合のよい指標を選び、自社のヒットを自社で認定する。開示が増えているように見えて、進んでいるのは「測定の私有化」である。どの作品が当たったかの一次データを独占することが、広告主・制作会社・取引相手に対する力関係の源泉になる。

だから Prime Video の参入は両義的だ。開示の裾野は広がった。しかしリーチ型という「もう一つの物差し」が増えたことで、業界共通の基準はむしろ遠のいたとも言える。

示唆:自社チャートと第三者計測のせめぎ合い

広告主にとって、売り手の自己申告チャートは出稿判断の根拠にならない。広告付きプランが各社の成長エンジンになるほど、ニールセンのような第三者計測や監査への圧力は強まる。制作会社にとっても、更新判断や成功報酬の根拠が不透明なままでは交渉力を持てない。Top 10 の公開競争は、その圧力をかわすための「開示しているように見せる」技術と読むこともできる。

WATCHLIST — 次に追う 3 つ
  1. Amazon の開示拡張。「当面は時間系の指標を出さない」という方針が、広告主からの透明性要求でいつ転換するか
  2. 自社チャートと第三者計測の乖離が表面化する事例。ニールセンの配信視聴チャートのような独立データが整うほど、「自社 Top 10 だけのヒット」は検証可能になる
  3. 規制・業界団体の動き。広告取引の文脈で配信視聴データの標準化や監査の要求が制度化すれば、Top 10 は販促ツールから開示義務の対象へと性格を変える

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