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米司法省、Paramount の WBD 買収を無条件承認 — 8 カ月審査は「競争をむしろ増やす」と結論

資産売却も行動的救済もゼロ。米司法省 は約 1,110 億ドルの Paramount Skydance × WBD 統合を、SVOD・リニア TV・劇場映画の 3 市場すべてで「害なし」と結論した。声明は Netflix 案との比較審査が判断に寄与したとまで明かす。残る関門は州司法長官と欧州の二重審査だ。

TL;DR — 3 行で読む
  • 米司法省 反トラスト局が 6 月 12 日、Paramount Skydance による WBD 買収の審査終結を声明。資産売却も行動的救済も課さない無条件承認となった
  • 8 カ月の調査は SVOD・リニア TV・劇場映画の 3 市場で「競争への害は見込まれない」と結論。撤退した Netflix の買収案も並行審査し、両案の対比が判断材料になったと異例の言及
  • 連邦の承認後も、州司法長官の提訴準備と 欧州委員会 の二重審査(企業結合 7/7・外国補助金 7/14 期限)が残る。クロージング目標は 2026 年 Q3

概要

ハリウッド最大の再編が、連邦の関門を素通りした。米司法省(DOJ)反トラスト局は 6 月 12 日、Paramount Skydance による WBD 買収(総額約 1,110 億ドル)の調査を終結する声明を公表した。資産の切り離し(事業売却)も、行動的救済(事業のやり方に条件を付ける是正措置)も一切課さない。完全な無条件承認である。

声明によれば、約 8 カ月の調査では両社から 80 人超の保管者を通じて 200 万件以上の文書を受領し、業界の第三者からも大量の資料と意見を集めた。そのうえで、定額制動画配信(SVOD)、リニア TV(放送型の従来テレビ)、劇場用映画の開発・製作・配給という 3 つの市場のいずれでも「競争や米国の消費者への害は見込まれない」と結論づけた。両社の自主的な秘密保持の放棄により、州司法長官のオフィスも調査に参加し、証人尋問に同席している。

経緯

この承認は、業界を 8 カ月にわたり巻き込んだ争奪戦と規制ロビーの終着点にあたる。

  • 2025 年 12 月: Netflix が WBD の買収で先に合意
  • 2026 年 2 月: Paramount が全額現金の対案で上回り、定時の合併契約を締結。Netflix は撤退
  • 4 月 23 日: WBD 株主が Paramount 案を承認
  • 6 月 5 日: Paramount の法務トップが「Netflix の焦土作戦」を DOJ に告発する書簡(前報)
  • 6 月 12 日: DOJ が審査終結を声明

注目すべきは、声明が Netflix との入札戦そのものを審査の資産として語っている点だ。DOJ は Netflix 案と Paramount 案の双方を審査し、メディア業界の進化と WBD の戦略的価値について両案が対照的な見方を示したことが、比較の視座になったと明記した。WBD を巡っては AOL(2001 年)、AT&T(2018 年)、Discovery(2022 年)と統合審査が繰り返されており、声明は「テクノロジー主導の産業では、近過去の破壊者が現在の独占者へと素早く転じうる」という歴史認識まで添えている。

米業界誌 Variety によれば、承認には政界から批判も出ている。ウォーレン上院議員は、トランプ政権に近い富豪たちが人々の視聴内容と支払額を支配することになるとして「この戦いは終わっていない。州司法長官が合併を止めるべきだ」と声明を出した。実際、カリフォルニア州のボンタ司法長官らは、反トラスト法に基づく買収阻止訴訟に進む可能性を示している。

構造解釈:「第 3 極の形成」を競争促進と読んだ

無条件承認の核心は、DOJ が統合 2 社を「追う側」と位置づけたことにある。声明は Paramount+ と HBO Max を SVOD への歴史的な後発参入者と呼び、上位 3 サービスより加入者が少ない両者の統合は、むしろ大手への「より強健な対抗軸」を生むと評価した。シェアの足し算で集中度を測る伝統的な発想ではなく、Netflix・Amazon・Disney が先行する市場の第 3 極形成を競争促進と読む構図だ。なお YouTube や TikTok は、注意の獲得では広く競合するものの、判例上は SVOD の代替とは認められないとも整理している。

反対派が持ち込んだ害の理論は、個別に検討のうえ退けられた。Disney による Fox 買収を「統合が製作本数を減らした前例」とする類推には、当該統合の 1 年後にコロナ禍が始まっており比較が成立しないと反論。労働市場への害の主張にも、製作量を維持・拡大する経済的動機がある限り人材需要は減らないとした。コンテンツの囲い込み懸念についても、両社が歴史的にライセンス供給を広く行ってきた実績から、統合後も外部供給は続くと判断している。

この判断は、同じワーナー資産を巡って AT&T 買収の阻止訴訟(2018 年)まで起こした過去の DOJ と好対照をなす。現在の Paramount の法務トップが当時の訴訟を主導した元反トラスト局長である事実も含め、審査の力学を知る側が完勝した形だ。

示唆:連邦の承認では終わらない多層規制

もっとも、本件のクロージング(2026 年 Q3 目標)までの道はまだ複線的だ。米国内では、調査に同席してきた州司法長官が独自訴訟の可能性を残す。欧州では 欧州委員会 が二つの審査を並行して進める。一つは通常の企業結合審査(期限 7 月 7 日)、もう一つは外国補助金規制(FSR。非 EU 政府の資金が域内競争を歪めないか審査する制度)の審査(期限 7 月 14 日)だ。買収資金のうち約 240 億ドルはサウジアラビア・カタール・アブダビの政府系ファンドが拠出し、外国投資家の持分は統合会社の 49.5% に達する。この構造から、FSR の本格審査入りを予想する競争法専門家もいる。

欧州の業界団体も黙っていない。欧州プロデューサーズクラブや国際映画館連盟など 4 団体は、両社が欧州の劇場興行収入の約 3 割を占めるとして欧州委員会に懸念を申し入れた。英国の競争・市場庁も 8 月 7 日を期限に第 1 段階審査を進めており、「連邦の green light が出ても、州と域外の審査が時間軸を握る」という大型メディア M&A の新しい標準形がここでも確認されつつある。

WATCHLIST — 次に追う 3 つ
  1. 州司法長官(カリフォルニア等)が実際に提訴へ踏み切るか。連邦承認と矛盾する州単独の阻止訴訟が成立すれば、メディア M&A の審査地図そのものが変わる
  2. 欧州委員会 の二重審査の行方。企業結合(7/7)と外国補助金(7/14)のいずれかが詳細審査(Phase 2)入りすれば、Q3 クロージングは年明けへずれ込む
  3. 無条件承認の前提となった「ライセンス供給は統合後も続く」という行動予測が、HBO Max と Paramount+ の統合方針の中で実際に維持されるか

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