Disney+ 韓国の追走戦略 — 322 万契約で Netflix の 1,559 万に挑む、現地 OTT との束ね売り
Disney+ 韓国は契約者で Netflix に 1,200 万差をつけられている。自社韓国オリジナルの量産に加え、現地大手 CJ ENM 系の TVING と組んだ束ね売りで差を詰めにかかる。グローバル IP と現地コンテンツの相互補完が追走の軸になる。
概要
Disney+ 韓国は、市場の王者を追う側にいる。動画配信の Disney+ は 2025 年 12 月時点で韓国に 322 万契約を持つが、首位 Netflix の月間利用者 1,559 万には遠く及ばない。差はおよそ 1,200 万である。
現地勢にも後れを取る。同じ 2025 年 12 月時点で、Coupang Play は 843 万、TVING は 734 万と、いずれも Disney+ を上回る(コリア・タイムズ、2026 年 1 月)。
この差を詰める手を、Disney+ は二つ重ねている。一つは自社の韓国オリジナル作品(その国向けに独自制作する番組)を増やすこと。もう一つは、現地の大手 OTT(オンライン配信サービス)と組んで料金プランを束ねて売ることだ。後者の相手が、ケーブル局 tvN の親会社である CJ ENM が運営する配信サービス TVING(ティービング)である。グローバル IP の Disney と、韓国コンテンツの強い現地勢が手を結ぶ構図といえる。
経緯
韓国市場で Disney+ は伸び悩んできた。コリア・タイムズによれば、Disney+ の契約数は 2024 年 12 月の 293 万から 2025 年 12 月の 322 万へと小幅に増えたにとどまる。同じ期間、現地勢の Coupang Play(クーパン・プレイ)は 709 万から 843 万へ、TVING は 725 万から 734 万へと、いずれも Disney+ を上回る規模で推移した。Disney+ は契約数で国内 4 位前後の位置にある。
転機となったのが 2025 年 11 月 17 日に発表された束ね売りである。Disney+ は CJ ENM の TVING、そして別の現地配信 Wavve(ウェーブ)と組み、まとめ売りのプランを用意した。料金は二種類ある。
- 3 サービス版: 月 21,500 ウォン(約 14.6 ドル)。個別契約に比べ最大 37% 安い
- Disney+ と TVING の 2 サービス版: 月 18,000 ウォン(約 12.3 ドル)。約 23% 安い
ハリウッド・リポーターはこれを、韓国でグローバル配信と現地 OTT が組んだ初の提携と位置付けた。ディズニーのアジア太平洋 DTC(直販事業)担当上級副社長トニー・ザメチコウスキー氏も、韓国における大胆な一歩でありアジア太平洋戦略の要となる動きだとコメントしている。
構造解釈:束ねて守る、流して稼ぐ
今回の提携は、Disney+ にとって「束ねて守る」と「流して稼ぐ」の二面を持つ。
守りの面はわかりやすい。単独では Netflix に契約数で大きく劣るため、現地で支持の厚い TVING・Wavve と束ねることで、契約者を確保し解約を抑える。韓国の視聴者から見れば、ディズニーやマーベルのグローバル作品と、韓国ドラマ・バラエティを一つの安い料金でまとめて持てる。Netflix 一強の市場で、価格と品揃えの両面から対抗する設計だ。
攻めの面はやや見えにくいが、こちらが効いてくる可能性がある。提携は一方通行ではなく、CJ ENM のコンテンツを Disney+ の国外市場へ流す取り決めをともなう。ハリウッド・リポーターによれば、tvN の代表作『トッケビ』や『応答せよ 1988』を含む最大 60 本の TVING・CJ ENM 作品が、Disney+ に独占配信されるかたちで日本へ渡る。
この流れはさらに広がっている。2026 年のヴァラエティの報道では、TVING のコンテンツは Disney+ 日本の専用枠「TVING Collection」(2025 年 11 月 4 日開始)に加え、HBO Max のアジア太平洋 17 か国・地域の専用ハブ(2026 年 1 月 2 日開始)でも展開された。CJ ENM のコンテンツ流通責任者セバスチャン・キム氏は、K コンテンツが描く共感の物語はやがて普遍的な言語として響くと語る。つまり Disney+ は、自社の契約防衛と引き換えに、韓国コンテンツのグローバル配信の受け皿という役回りも担っている。
示唆:現地放送局とグローバル OTT の相互補完
今回見えてくるのは、現地の放送・制作勢とグローバル OTT が、競合しつつも互いを必要とする相互補完の関係だ。CJ ENM のような現地大手は、tvN という強い放送枠と TVING という自社配信を持ちながら、国外への到達では Disney+ や HBO Max のグローバル網に頼る。Disney+ は逆に、韓国国内での品揃えと契約防衛を現地コンテンツに頼る。両者の利害が、束ね売りと国外配信という二つの取り決めで噛み合った。
ただし留意も要る。束ね売りは契約数を底上げしても、1 契約あたりの収益(ARPU)を割引のぶん薄める。今回の韓国オリジナルや束ね売りが、Disney+ の DTC 事業の採算とどう整合するかは、韓国単独の開示が乏しく現時点では読み切れない。
— Sources / 情報源
- The Korea Times: Disney+ bets big in 2026: Can it win over Netflix subscribers?
- Variety: Disney+ and CJ ENM's Tving Launch Bundle Deal in Korea
- The Hollywood Reporter: Disney+ and CJ ENM's TVING Launch Landmark Streaming Partnership in Korea
- Variety: CJ ENM's TVING Expands K-Drama Slate in Japan, Asia-Pacific via Disney+ and HBO Max