規制・法務 · Regulation & Compliance

米裁判所、Disney らの対 MiniMax 著作権訴訟を本訴へ — 生成 AI の『出力』侵害が問われる

米連邦地裁が、Disney・Universal・Warner Bros. による中国 AI 企業 MiniMax への著作権訴訟で、却下申立を退けた。Hailuo AI がスパイダーマン等を無断生成したとされる事案が本訴へ進む。AI の『学習(入力)』中心だった争いが、『生成物(出力)の見た目』へ広がる節目である。

TL;DR — 3 行で読む
  • 米連邦地裁(C.D. Cal、Blumenfeld 判事)が 5 月 26 日、Disney ら大手スタジオの対 MiniMax 著作権訴訟で却下申立を退け、本訴(ディスカバリー)へ進めた
  • MiniMax の動画生成『Hailuo AI』がスパイダーマン等を無断生成したとされる事案。管轄権・請求不成立の主張はいずれも却下された
  • 学習データ(入力)中心だった AI 著作権 の争点が、生成物(出力)の見た目の侵害へ広がる。5 月 29 日に手続審理

概要

米カリフォルニア中部地区連邦地裁の Stanley Blumenfeld 判事は 5 月 26 日、Disney・Universal・Warner Bros. ら大手スタジオが中国の生成 AI 企業 MiniMax を訴えた著作権侵害訴訟で、被告の却下申立を退けた。これにより、MiniMax の動画生成サービス『Hailuo AI』がスパイダーマン・ダース・ベイダー・シュレックといった著名キャラクターを無断で生成したとされる事案は、本訴(フルディスカバリー)へ進む。

訴訟は 2025 年 9 月 16 日に提起された。MiniMax は二つの論点で早期の棄却を狙った。第一に、同社は主に中国で事業を行うため米裁判所に管轄権がないこと。第二に、原告が法的に有効な著作権侵害の主張を示せていないこと。判事はいずれも退けた。却下申立を退けたこと自体は責任の認定ではない。だが原告の主張が十分に説得力を持つと判断されたことを意味する。MiniMax は学習データの文書、モデル設計の判断、Hailuo の米国での収益といった内部記録の開示を迫られる。残る論点をめぐる審理は 5 月 29 日に予定される。

経緯

生成 AI の著作権をめぐる訴訟は、これまで「学習データ(入力)」が中心だった。AI が著作物を無断で学習に使ったことの是非――フェアユースか侵害か――が主要な争点である。今回の MiniMax 訴訟が画期的なのは、争点が「出力(生成物の見た目)」にも及ぶ点だ。Hailuo が生成する映像が、スパイダーマン等の保護されたキャラクターの視覚的特徴を再現しているなら、それ自体が侵害になりうる。

被告が中国企業である点も論点を複雑にした。グローバルに提供される生成 AI サービスに対し、米国の著作権法と裁判管轄がどこまで及ぶか。判事が管轄権を認めたことは、海外の AI 企業も米市場で事業を行う限り米法廷に立つ、という前例になりうる。

構造解釈:『入力』から『出力』へ広がる AI 著作権の戦線

ここで起きているのは、AI 著作権 の戦線が「学習データ(入力)」から「生成物(出力)の見た目」へ広がる動きである。学習段階の是非はフェアユースの議論が続き決着が見えにくいが、出力が著名キャラクターをそのまま再現していれば、従来型の著作権侵害として判断しやすい。ハリウッド大手は、立証しやすい「出力の侵害」を足がかりに、AI 企業へ責任を問う戦略を取っている。

これは、同時期の音楽(後述の Suno 訴訟)とも通じる。権利者は、無断利用には訴訟で巨額の賠償リスクを突きつけ、正規利用にはライセンスで対価を取る――という二面戦略で、生成 AI に「権利者へ払う」規範を定着させようとしている。MiniMax の本訴入りは、映像分野でその規範形成が司法判断の段階に入ったことを示す。なお本件は、ニュース記事のスクレイピングを争う CNN 対 Perplexity(別事案)とは、当事者も争点(映像・キャラクターの出力)も異なる。

示唆:生成 AI 配信の『法的前提』が定まる局面

MiniMax の本訴入りは、生成 AI による映像生成の法的前提――出力の侵害と海外企業への管轄――が司法で定まる局面に入ったことを示す。ここでの判断は、すべての AI 動画企業の事業条件を左右しうる。

WATCHLIST — 次に追う 3 つ
  1. ディスカバリーで開示される学習データとモデル設計が、侵害立証にどう使われるか
  2. 「出力の見た目の侵害」がどの基準で認定されるか(キャラクターの類似性の線引き)
  3. この判断が Google の Gemini Omni や Artlist TV など、生成 AI で映像を作る配信プロダクトの権利処理にどう波及するか

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